3.降下軽石と火山灰土でおおわれた堆積岩地域の山地崩壊
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概要
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1976年6月の梅雨前線豪雨によって, 鹿児島大学農学部附属高隈演習林においては200個をこえる山地崩壊が発生した。本演習林内の垂水市高峠では, 総雨量556mm, 最大時雨量45mmと大きな値を記録した。本演習林は, 大隅半島西北部の鹿児島県垂水市に位置する。筆者等は, 本演習林に発生した山地崩壊の実態とその原因を明らかにするために, 現地調査, 資料解析および土質試験を行った。以下得られた結果を要約すると次のようである。1)地質は, 堆積岩(四万十層), 溶結凝灰石, 花こう岩からなり, さらにそれらをおおう形で降下軽石, 火山灰土がほぼ全体に分布する。2)地形は, 地質と地質構造を反映して, 流域によって違った性質を示す。3)植生はビシャゴ岳の西方斜面に広葉樹林が集中して存在するが, ほかは, 針葉樹林の占める割合が大きい。とくに, 松崎川, 串良川上流域の針葉樹占有率は大きい。北部は樹令20年以下の幼令林が多い。4)崩壊地は, 1947年から1976年まで北部から牛根境, 高野に面する流域斜面, 松崎川上流域斜面, 佛石川上流域斜面および串良川上流域斜面に集中して発生する。5)崩壊の形態は, 火山灰土を境にその上の降下軽石がすべった表層スベリである。崩壊の原因は湧出水によるものが最も多く, ついで自重増加によるものがつづく。湧出水によるものは自重増加によるものに比較し, 緩斜面で発生する。6)崩壊面積は, その多くが450m^2以下で小さく, 地質によって異なる。崩壊深さは60cm以内である。7)地質構造, 岩石の選択的侵食によって微地形は複雑に変化する。その結果は, 降下軽石, 火山灰土の堆積および崩壊に重要な影響を与える。崩壊は, 流れ盤構造の斜面で, その74.5%が発生する。崩壊地点の斜面上の位置は尾根から40m以内が大部分を占める。8)樹令20年以下の幼令針葉樹林で多くの崩壊が発生する。崩壊深さ, 崩壊面積は樹令の増加とともに大きくなる。9)地域ごとの地質, 地形, 植生の性質および崩壊分布, 植生の歴史的変化を見ることによって崩壊分布の特性に及ぼす原因が推定できる。10)降下軽石, 火山灰土および基岩風化土の土質工学的性質の違いがスベリ面の位置を決定する。
- 1978-03-31
著者
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