高齢者ケアマネジメントにおける困難ケース : ソーシャルワークからの接近
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概要
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人と環境の接点に生じる生活問題の解決をめざしてきたソーシャルワークの視点から、介護保険制度下における「困難ケース」について分析し、その対応に必要な視点や条件を検討した。欧米の先行実践からは、1)体系的な調査にもとづく実態把握、2)問題の重層的存在の認識3)家族全体を視野にいれた包括的アプローチ、4)行政のリーダーシップと関係機関の協働、5)予防的アプローチの重要性が析出された。また、近年の研究から、高齢者の困難ケースは、利用者の精神的問題およびキーパーソン不在に起因する意思決定能力の低下、介護力の脆弱化を含む介護者の問題、サービス利用拒否などに特徴づけられる一方、介護支援専門員は、当事者の意思決定がなされない状況や、行政や他の機関との連携が困難な状況に直面していることが判明した。さらに、154名の介護支援専門員への自記式質問紙調査から、困難ケースは平均で担当ケースの14%に相当し、その間題特性は重層化し、対応についても多元的になされる傾向がみられるものの、独力で対応している場合も一定程度みられることが明らかになった。多問題が重層化している困難ケースでは、介護保険制度あるいは介護支援専門員単独による解決は困難であることから、責任の所在の明確化を前提とした実態把握と協働体制の構築が求められるとともに、人と環境の諸要因からなる全体関連性に働きかけるソーシャルワークの視点と方法がより一層重要になることを指摘した。
- 首都大学東京の論文
- 2005-03-25
著者
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