四倍体ニラにおける単為発生性の遺伝様式
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概要
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ニラのアポミクシス(複相大胞子形成と単為発生から構成される)の遺伝様式を解明する手がかりを得るため,アポミクシス四倍体ニラ(Allium ramosum, syn. A. tuberosum 2n=32)の交雑集団において,胚珠観察法を用いて単為発生を調査した結果,10個体の非単為発生個体を選抜することができた.フローサイトメーターによる倍数性調査を行ったところ,全個体が四倍体であった.9個体の非単為発生個体については,交雑を確認するためにアポミクシス品種と交雑検定を行った.この結果,1個体(00-03-14)を除いて100%の交雑率を示した.「テンダーポール」を検定親(花粉親)とした組合せでは,単為発生と非単為発生個体がほぼ1:1に分離したが,他の組合せでは単為発生個体の頻度が高く,非単為発生因子を優性と仮定した場合に矛盾が生じた.このことから,単為発生を支配する主働遺伝子は単一の優性因子であると推察され,カイニ乗検定を行った結果,「テンダーポール」はその遺伝子座について単式遺伝子型であることが示唆された.5個体の非単為発生個体(97-11-7, 97-12-43, 97-12-85, 00-02-3, 00-02-187)を種子親とした検定交雑では,F_1世代に六倍体が高頻度で出現した.このうち(97-12-43×「テンダーポール」)F_1の六倍体80個体について花粉親特異的なRAPDマーカー4個の遺伝子型を調べたところ,76個体(95%)でマーカーの分離が認められた.このことから,種子親である非単為発生個体において,複相大胞子形成に起因する非減数性卵細胞が受精して六倍体を生じたものと推察された.以上の結果,本研究において四倍体ニラの両性生殖個体が得られ,F_1で六倍体を生じた両性生殖個体は複相大胞子を形成していると推察された.
- 日本育種学会の論文
- 2006-09-01
著者
-
生井 潔
栃木農試
-
田崎 公久
栃木県農業試験場
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小林 俊一
栃木県農業試験場
-
天谷 正行
栃木県農業試験場
-
中澤 佳子
栃木県農業試験場
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生井 潔
栃木県農業試験場
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小島 昭夫
独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構野菜茶業研究所
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田崎 公久
栃木県農業試験場生物工学部
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小林 俊一
栃木県農業試験場栃木分場
-
小林 俊一
栃木農試
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