潮間帯の二枚貝帯に生息するツタノハガイの分布と生活環
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概要
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岩礁性潮間帯のイガイ科二枚貝帯に生息するツタノハガイ科の笠貝ツタノハガイ(Patella flexuosa)の分布と生活環を、和歌山県白浜町で調べた。ツタノハガイは、二枚貝床が剥がれて岩盤が露出したギャップの中だけで行動し、岩盤の表面に生えている皮状の藻類を摂食していた。平均潮位から20 cm∿70 cm下方の潮間帯下部に生息しており、特に平均潮位よりも30 cm∿60 cm下方での密度が高く、ギャップ100 cm^2あたり1個体にも達していた。この垂直分布は、イガイ科の二枚貝ヒバリガイモドキ(Hormomya mutabilis)の分布帯とほぼ重複していた。また、1年を通して、波浪の強い所ほどその密度は高かった。生殖腺の状態とその重量の月別変化から、繁殖期間は5月から9月であることがわかった。殻長5∿10 mmの稚貝は7月から10月にかけて発見されるようになり、1年間で15∿18 mmにまで成長、2年間では25∿30 mmに達した。寿命は2年以上と推定された。ツタノハガイは帰家行動をし、殆どの個体は家痕または粘液シートを各自の休息場所に持っていた。その家痕の場所は、ヒバリガイモドキの二枚貝床に接する、ギャップの縁辺部であった。ヒバリガイモドキの二枚貝帯の中のギャップが、ツタノハガイの生息場所としてどのような意義があるのかを議論した。
- 1998-12-31
著者
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