岩礁性潮間帯のイガイ科二枚貝帯に生息するアワジチグサガイの垂直分布と生活環
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概要
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岩礁性潮間帯に生息するニシキウズガイ科の微小な巻貝・アワジチグサガイの, 2種のイガイ科枚貝帯(ムラサキインコガイとヒバリガイモドキ)での垂直分布と生活環を調査した。生息密度は潮位が低くなるほど増加し, 潮間帯下部に形成されたヒバリガイモドキ床の方が上・中部のムラサキインコガイ床よりも1年中はるかに高かった。生息密度を基準変数とし, 採集場所の潮位・二枚貝床内の砂泥量・捕食者である多毛類の密度・イガイ科二枚貝の密度と容積という5つの要因を説明変数とした多重回帰分析では, 潮位のみが巻貝の密度と高度に有意な負の相関を示した。4月から6月にかけて, 殻幅1 mm以下の多数の稚貝が, ヒバリガイモドキ帯の中にあるピリヒバやカイノリを主とした海藻のマットで採集され, ヒバリガイモドキ床では殻幅1 mm以上の幼貝が4-7月に多数採集された。このコホートの生息密度は夏から冬にかけて減少したが, その平均殻幅は増大して翌年の春4月には殻幅2 mm以上に成長した。その後, このコホートは夏7月までには完全に消失した。4-6月の殻幅組成を見ると, この前年生まれの大型個体と新規に定着した稚貝の2つの山が現われた。以上から, この巻貝は年1世代で, 3-6月頃に繁殖, 稚貝はまず潮間帯下部の海藻のマットに加入し, 成長するにつれてヒバリガイモドキ床やさらに上方のムラサキインコガイ床にまで分散する生活環を送ることが示唆された。
- 1996-09-30
著者
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