精神薄弱児の学習過程の発達に関する研究 : 弁別任意移行における反応様式の検討
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概要
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本研究は,精薄児の学習過程を主として発達的な視点から検討した。すなわち,MA3〜4才から9〜10才段階の精薄児および標準的な精神発達を示すと推定される同一CA段階の正常児を被験対象に,弁別任意移行課題を用いて,移行の反応様式の変化を比較した。さらに,これらの結果と次元分類および次元分類の理由の言語化能力との関連性について検討した。結果の要旨は以下の通りである。1.精薄児群における年齢段階の推移に伴う移行の反応様式の変化は,遅速の差異を無視すれば,正常児群と同じようなパターンを示す。すなわち,逆転移行の反応様式を選ぶ者の割合は年齢段階の推移とともに増加し,非逆転移行の反応様式を選ぶ者のそれは減少する。2.両被験児群について比較すると,逆転移行の反応様式を選ぶ者の割合はどの年齢段階においても,精薄児群の方が正常児群よりも少ない傾向にある。正常児群は3〜4才から5〜6才段階にかけて,非逆転移行優位から逆転移行優位に転じるが,精薄児群はこのような現象が5〜6才から7〜8才段階にかけてみられる。また,逆転移行の反応様式を選ぶ者の割合が50%を上回るようになるのは,両被験児群ともに転換直後の年齢段階である。これらのことから,刺激の知覚的特徴に対する直観的反応優位から次元性を媒介とした概念的反応が優位になるのは,正常児では3〜4才から5〜6才段階,精薄児では5〜6才から7〜8才段階であることが示唆される。3.精薄児群,正常児群ともに,逆転移行の反応様式を選ぶ者は非逆転移行の反応様式を選ぶ者に比較し,「色」,「形」の両方ないしは片方の次元について自発的に分類し,その理由を言語化できる者の割合が多く,分類と言語化の全くできない者の割合が少ない傾向にある。この点は,次元分類の理由の言語化において著しい。両被験児群を比較すると,精薄児群は次元分類できる者の割合では正常児群とほぼ同水準にあるが,両方の次元について言語化できる者の割合では正常児群よりも少ない傾向にある。この点は,逆転移行の反応様式を選ぶ者において著しい。4.第3弁別における再学習カード対の誤反応の分析から,精薄児は正常児に比較し,弁別移行過程での手かかり学習が不安定である。
- 千葉大学の論文
- 1975-12-26
著者
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