精神薄弱児の弁別移行学習に関する研究 : MAを変数とした逆転移行と非逆転移行の比較検討
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概要
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本実験では,筆者の先行研究(梅谷,1973;1975)におけるMA6才と8才段階の正常児および精薄児の弁別逆転移行学習に関する資料に,新たに同一MA段階の被験児の弁別非逆転移行学習に関する資料を加えて,MA水準の違いと学習機制の変化について比較検討した。その主な結果は以下の通りである。結果-I 1 .MA6才段階では,正常児群,精薄児群ともに,逆転移行の困難な者が多く,他方非逆転移行の容易な者と困難な者が同程度であった。MA8才段階の正常児群は逆転移行の容易な者が多く,非逆転移行の困難な者が多かった。これに対して,MA8才段階の精薄児群は,逆転移行と非逆転移行の容易な者,因難な者の間に明瞭な差異がみられなかった。結果-II 1.正常児群,精薄児群ともに,先行学習達成の速い者(速習児群)は遅い者(遅習児群)に比べ逆転学習が速く,非逆転学習が遅い傾向にあった。2.MA6才段階の精薄児群は同一MA段階の正常児群に比べ速習児群,遅習児群ともに,逆転学習が遅く,またMA8才段階においても遅い傾向にあった。他方,非逆転学習については,精薄児群と同一MA段階の正常児群との間,また両MA段階の間に明瞭な差異が認められなかった。3.MA8才段階の速習と遅習の精薄児群の逆転学習に才ける速さはそれぞれ, MA6才段階の速習と遅習の正常児群のそれにほぼ匹敵していることがうかがわれた。以上の結果から,概して,精薄児は同一MA段階の正常児に比べ,次元性の概念を利用した媒介型の反応様式よりも単純な刺激と反応との連合による反応様式が強いことがうかがわれる。また,とくに前者の反応様式の発達的変化において,精薄児は正常児に比べMA2才程度遅れることが示唆される。
- 千葉大学の論文
- 1976-12-20
著者
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