眼の焦点調節に大脳が果たす役割についての研究(1) : ネコ外側シルビウス上領破壊前後における焦点調節の変化の検討

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ネコの大脳視覚連合領の1つである外側シルビウス上領(lateral suprasylvian area; LS領)は焦点調節,輻湊眼球運動,縮瞳(近見反応の3要素)に関係する領域であり,焦点調節に伴うニューロン活動の存在は知られている。しかし,この領域の局所的な機能脱落が焦点調節にあたえる影響については知られてない。われわれは成ネコ5匹を用い,接近・離反する視標を追視する際の焦点調節に対して,LS領の局所的破壊(電気凝固法による)が与える効果を検討した。その結果,両側LS領破壊を行った4匹のうち3匹と,片側破壊を行った1匹の合計4匹(80%)に破壊後,焦点調節応答の大きさに有意な減少が認められた。残りの1例についても同様の傾向が認められたが,試行数が少ないため有意水準に達しなかった。LS領は視対象の3次元空間内での動きを分析する領域であることは多くの研究により示唆されている。さらにこれらの視覚情報処理の結果がLS領での焦点調節の制御に関係する神経信号に変換され(視覚・運動連関),脳幹の焦点調節制御系に送られることも示唆されている。本研究の結果はLS領の局所破壊により,1)LS領の奥行き知覚についての情報処理機能が障害を受けたため,2)LS領での視覚,運動連関が障害を受けたため,あるいはその両者の障害を受けたため引き起こされたと考えられる。
北里大学の論文
1993-12-31

眼の焦点調節に大脳が果たす役割についての研究(1) : ネコ外側シルビウス上領破壊前後における焦点調節の変化の検討

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