鉄棒運動における喉頭動態と筋活動様式について : 後方支持回転系(1部技能)

概要

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喉頭の基本的な機能は喉頭を閉鎖することであり,閉鎖機能の1つに「息こらえ」(喉頭括約作用)がある.息こらえが上肢の運動支点を固定することになり,運動効率を高めていることは経験的に知られているが,十分な裏付けが得られていない。そこで,自己の体重を負荷としての上肢による負荷補償が最も要求される鉄棒運動の懸垂・支持回転系運動の中より後方支持回転系運動を取り上げ,2名の元一流体操選手を被験者とし,新たに開発された高解像度内視鏡ビデオシステムを用い,直接,喉頭の動態を観察すると共に,動作ならびに筋の作用機序の面より喉頭括約作用の運動への関与について検討した.1)2名の被験者共,回転動作時における喉頭動態ならびに筋放電様相は類似した傾向を示し,被験者間による大きな変異は認められなかった.2)後方支持回転では喉頭は回転中,終始開放されており,肩関節の動きに関与する筋群に顕著な放電の出現は認められなかった.3)しかしながら,後方浮支持回転では,喉頭括約(前庭ヒダ・声帯ヒダ閉鎖)が観察され,同時に肩関節の伸展・屈曲動作に関与する筋群に顕著な放電が出現し,肩関節での負荷補償が認められた.4)回転に伴う鉄棒の歪量の最大値は,後方支持回転よりも後方浮支持回転で大きく,しかも,その出現前後に後頭括約が観察された.これらのことより,鉄棒の後方支持回転系のような運動の場合,肩関節への負荷量の状態により肩関節伸展・屈曲筋群による負荷補償を支援するために喉頭括約作用が要求されるものと考えられ,上肢運動と喉頭括約作用との関係について,肩関節への負荷量の状態に起因する運動支援としての前庭ヒダ・声帯ヒダの関与の存在が強く示唆された.
バイオメカニズム学会の論文
1996-07-25

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