乳癌に対する乳房温存療法の試み : 検討例の適応と方法

概要

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近年,本邦では乳癌に対して乳房温存療法が検討されている。当科でも1990年2月より乳房温存療法を開始した。その適応は臨床的所見から1)腫瘤径が2.0cm以下で胸筋固定がなく,版窩リンパ節に転移を疑わせない。また遠隔転移を認めない(Tla, NO or Nla, MO)。2)腫瘤の部位が外上方(C領域)にある。3)乳頭中心から腫瘤縁までの距離が5.0cm以上ある。4)乳汁分泌を認めない。5)mammographyで広範な石灰化を認めない。6)腫瘤が複数ある場合は適応から除外する。また病理組織学的所見として1)切除標本の断端に癌組織を認めない。2)腋窩リンパ節に転移を認めない(n0)。3)乳管内進展が軽度で多中心性傾向がない。そして患者,家族に十分な説明を行ない承諾を得ることとした。手術方法はquadrantectomy+axillary dissection後,残存乳房に対して放射線療法を行なっている。現在のところ臨床的適応を満足した症例は5例であったが,1例は病理組織学的に不適当で,1例は本人が乳房切断術を選択したため,最終的には乳房温存療法は3例に行なっている。今後は症例数を増加させ,長期の生存率,健存率を求め乳房温存療法の安全性についで慎重に検討していきたい。
北里大学の論文
1991-04-30