屍心のう液の紫外部分光分析ならびに法医学への応用

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めざましい生物化学の進歩は体液の分析方法をきわめて多角的なものとはしたが,紫外部分光分析に関する研究,特に心のう液については何かとり残されているような感がある。私どもは従来生体液および屍体液の分光分析を行なってきたが,今回は屍心のう液について検討したので報告する。I.実験材料および実験方法剖検時に採放した心のう液について経時的な変動ならびに種々変性による分光化学的な推移などを検討した。主な分析計器は日立分光光度計EPS-3T型でλspeedはslow,Absorbanceは0〜2.0の範囲で測定した。II.実験成績のまとめ心のう液の分光像のパターンは血清,血漿などと同様安定したもので生体髄液のそれとは全く異質のものである(Ab. Max.: 280mμ)。心のう液および血清は共に分光化学的にほぼ同一態度を示すのみならず,血液型学的にも類似し,AB型および生後4か月の屍体を除き,血清の1/2程度の抗体価の同種血球凝集素がみられた。またその反応態度も両者極めてよく類似している。血漿タンパクは常時血管壁を通過して組織液,髄液,体腔液などに広く分布するといわれているにもかかわらず,一般に濃縮しても同種血球凝集素が認め難いのに比較して,心のう液では極めて明瞭にみられることは興味深いものと言わざるを得ない。心のう液の酸処理ではhyperchromic shiftが,アルカリ処理ではbathochromic shift が生じ,その他種々の化学的操作で影響がみられた。死後経過時間と心のう液Absorbancyの増加はほぼ比例し,Absorbancyの測定によって死後経過時間の推定根拠となり得た。なお該Absorbancyと死因との相関関係についてはひきつづき検討中である。
北里大学の論文
1974-08-31

屍心のう液の紫外部分光分析ならびに法医学への応用

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