復元鋳造と出土遺物から考察する韓国青銅八珠鈴の鋳造方法
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概要
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韓国国立中央博物館で調査した青銅八珠鈴の鋳造工程を復元し、同形の青銅八珠鈴を制作した。本稿は、それら両者の鋳造痕跡比較と、関連する出土遺物の考察から、これまで不明であった朝鮮半島における古代鋳造技法の詳細を解明しようとするものである。八珠鈴は紀元前3〜2世紀の朝鮮半島南部地域独特のさまざまな儀礼用鈴具のひとつで、ほぼ同形・同大・同文様の2個1対で用い、これまでに4遺跡出土の8例が知られている。この復元鋳造からは以下のような点が判明した。1. 鈴にある双頭渦文 (双頭蕨手文) は、常温で固体の油脂を用いて原型に凹線を作り、細かい鋳型砂をその凹線に流し込んで鋳型を作る方法であった可能性が高い。しかし、狭くて深い凹線に充分に鋳型砂を流し込むことは困難で、復元では一部に空気が溜まった。2. 八珠鈴本体の凹線に凸線を組み合わせた文様の、凹線部は広くて浅いため双頭渦文と同様の方法で容易に復元が可能である。しかし、鋳型面に直接彫り込む凸線部では、砂崩れが発生し精緻に復元できなかった。用いる鋳型砂の質に起因すると思われる。3. 文様の復元鋳造から推測すると、八珠鈴の鋳型は滑石などを削って作ったのではなく、文様を鋳造するために常温で固体の油脂を用いた土 (真土) 製の分割鋳型である。4. 鈕の復元鋳造では、蝋を用いる方法、蝋を用いず鋳型砂だけで分割する方法、共に可能であった。このことからいずれの方法で八珠鈴の鈕原型を作ったかは判断できない。5. 鈴の復元鋳造では、二つの鈴孔部で鈴中子 (中型) と鋳型を粘土汁で接着する方法で可能であった。このことは八珠鈴が分割鋳型法である可能性を示している。
- 2004-03-15
著者
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三船 温尚
高岡短期大学産業造形学科
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後藤 直
東京大学大学院人文社会系研究科教授
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後藤 直
東京大学大学院人文社会系研究科教授:北九州鋳金研究会
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三船 温尚
Faculty Of Art And Design University Of Toyama
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