提案から同意に至る会話の分析 : 日本語母語話者と日本語非母語話者の課題解決を目指す会話データを基に
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
本稿では,課題解決型の話し合いにおいて,ほとんど面識のない日本語母語話者(NS)と日本語非母語話者(NNS)がどのように提案をし,同意に至っているのか,その過程と言語表現に着目して分析した。その結果,提案から同意に至る会話の流れの型には,提案の発話から始まるものと,意見要求など何らかの前置きをした後に提案を行なうものの,2つのパターンが見られた。会話の流れと提案の表現形式との関連を見ると,提案の発話から始まるものは直接的な表現が多用されていたが,前置きの後に提案をする場合には,相手に判断を求める表現や断定を避ける表現,可能性を示す表現が用いられており,より例示的,暗示的な表現を用いる傾向があった。また,話している内容と会話の流れの型にもある一定の傾向が見られた。写真の分類など意見の一致が容易でありそうな場合には,提案の発話から始まるものが多かったが,会話参加者の意見の一致が難しい場合やこれまでの話の内容とは全く異なる提案を行なう場合には前置きから提案を行なうという流れが多かった。また,会話者の人間関係と会話の流れとの関連を見ると,初対面の会話参加者の場合,上下関係や指示系統が確立されていないためか,決定を促したり行なったりする流れは見られず,会話参加者が協力して提案や理由述べを行なっていた。これは,初対面の場合,参加者間の関係が明確でないため,できるだけ良好な雰囲気で会話を進め,より良い人間関係の構築を目指そうとしているためではないかと考えられる。
- 岐阜大学の論文
著者
関連論文
- 2. 日本語研修コース(年報編,2003年度後学期・2004年度前学期)
- 8. 特別講演(2002年度・2003年度前学期)
- 1. 日本語研修コース(2002年度・2003年度前学期)
- 多文化間コミュニケーションのための「日本語」の教育 : ディスカッションプログラムからの一提言
- 日本語話者に対する非日本語母語話者との日本語コミュニケーション教育の重要性
- 教科書のモデル会話を用いた会話能力養成に関する考察 : 映像教材を活用した教室活動の分析
- 1. 日本語研修コース(2001年度)
- 初級レベルにおける統合型言語教育に関する一考察 : Peer feedbackを取り入れた発表プロジェクト
- 提案から同意に至る会話の分析 : 日本語母語話者と日本語非母語話者の課題解決を目指す会話データを基に
- 談話構造分析を活かした初級作文指導の可能性
- 2. 日本語研修コース(1999年度)
- 初級学習者の作文に見られる談話レベルの問題点の分析 : 初級作文のシラバス作成に向けて
- 学習者が自己修正時に用いるコミュニケーション・ストラテジーとは
- 「依頼」のモデル会話における談話構造 : 教材のレベルは談話構造に反映されているか
- 会話能力につなげる中上級用リスニング教材の開発
- 初級作文クラスで何を教えるべきか : 談話構造に着目したシラバス作成に向けて