情報処理・活用能力の形成に関与する諸要因の抽出と関連構造の解明 (3) : 情報的環境の補正による実体的環境の認識へのアプローチ
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概要
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本研究は, 情報処理能力の形成に関与する諸要因の抽出とそれら要囚の関連構造の解明をすることを目的とするものである。本稿はその第3稿として子どもの成長に関与する環境としての実体的環境及び情報的環境を取り上げ, その異質性と等質性, 関連性と相互補完性などの側面から子どもの成長空間としての意義と教育的配慮のあり方を考察することを予定していた。しかし, 総合的な情報的環境というものへの考察に取り組む以前に, 青少年の生活の中で急速に存在感を大きくしている「携帯電話」の価値と弊害に関して明確な評価軸を有しておく必要があることを痛切に感じるようになった。社会人を取り巻いている情報的環境と次世代を生きている子どもたちを取り巻いている情報的環境を同一のものとして捉えることは適切ではない。「携帯電話」が日常的なツールとして普及する以前に成人した40代以上の世代とその世代の子どもたちの世代には携帯電話というツールの存在感において非常に大きな乖離がある。これまでの歴史において経験のないいわゆる「ケータイ文化」 (携帯電話によるコミュニケーションによって成り立つ文化, 携帯電話の電話機能よりもむしろ携帯電話メールの送受信の占める位置が大きい) という環境の功罪をどのように捉えるか, そしてそれに対してどのように対処するかという視点な, くしては子どもの情報的環境について論じることはできないのである。それほど青少年にとっての携帯電話は日常的であり, かつ重みを持つものになっている。この問題に関して最も注意を払うべき点は,現代の我が国の情報的環境が急速な変化の途上にあるという点である。この変化は多くの有識者によって憂うべく事態として認識されているが, その行き着く先については十分な予想がなされているわけではない。技術開発はあらゆる分野において進展しており, 技術革新の成果が複合されて予期しなかったようなツールが世に出されるというよケな予測不可能な因子が多分にあるからである。しかし情報的環境の変化の末路を見極める前に, 現在進行中の変化への対応に心を砕くことが教育関係者を初めとする社会人の任務であろう。全ての変化が確定してからの対応は遅きに失するし, 社会的関心の高まりと民意が環境変化の方向性に対して全く無力であるとは思われない。子どもたちにとっての情報的環境を分析することと併せて, 環境をよりよい方向へ整えるための手だてを考慮することが急務であると考える。そこで本稿では, 携帯電話等の功罪をも視野入れた情報的環境の実態について考察を行った上で, 情報的環境 (見えの環境) を通して実体的環境を把捉する際に行われるべき「認識の補正」という作用の意義について論じている。
- 大阪教育大学の論文
- 2004-09-30
著者
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