高度経済成長期以降における生鮮野菜産地の盛衰 : polarization概念の適用
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概要
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カナダの農業地理学者であるトラフトン(Troughton,M.J.)は戦後から現代のカナダの農業を論じ,「polarization」という概念を示している。本研究はこの概念の導入を通じてわが国高度経済成長期以降の農業の再解釈を試みるものである。野菜生産出荷統計を用いた14品目の検討からは,産地の偏在傾向が進むとともに,出荷量上位の産地が突出する反面,下位が後退するという傾向が見られ,多くの品目で1970年代以降全国的な広がりを持っていた産地分布が失われるとともに出荷量も後退した。また,個別の品目に着目した流動体系を描き出すことから,その背景にも言及した。その結果,主産地の成長は,かつてはローカルなスケールで機能した流動体系の出荷を担った中小産地から出荷先を奪い,結果としてそれら中小産地は後退するという一続きの動きであったと理解することができる。また,一方での産地形成と他方での農業衰退という2つの事象はこのひとつの現象の別の側面であったということができる。これは循環的視点,フードシステム論的な枠組みを欠いた従来の産地形成論の限界でもある。野菜産地の地理的な分布,配置という観点から,特定産地に特化偏在するという産地の存在形態を再検討する必要がある。
- 地理科学学会の論文
- 2006-01-28
著者
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