顎顔面領域の感染症進展に与える白血球減少症および低蛋白血症の影響に関する研究 : ラットカラゲニン頬部膿瘍モデルを用いて
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概要
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ラット頬部に作製したカラゲニン膿瘍に S. pyogenes S-8 を接種して起こした感染症の進展に, 白血球減少症および低蛋白血症が影響を与えるか否かを調べる目的で, cyclophosphamide (CPA) によって白血球減少をきたしたラットおよび低蛋白飼料 (8% Casein 含有) 飼育で低蛋白血症を呈したラットを, それぞれの対照群ラットと比較した。1) CPA投与後の白血球数は, 3〜5日目で1/8〜1/12に低下した。2) 白血球減少群での頬部膿瘍外径ならびに膿瘍内浸出液重量の変化は, 対照群より小さかった。病理学的にも, 対照群の炎症細胞浸潤は顕著にみられたが, 白血球減少群の細胞浸潤は軽度であった。しかし白血球数正常の対照群の炎症細胞浸潤が時間経過と共に減弱したのと比べ, 白血球減少群では, 細胞浸潤が持続した。膿瘍内生菌数は, 36時間まで両群同様に推移し, その後, 対照群の菌数は減少し, 白血球減少群では接種菌量と同程度の菌量が維持された。3) 1日4gの低蛋白食で3週間飼育すると, Alb値は16.1%, Tpは17.8%, 体重は35.1% 減少した。4) 低蛋白血症群の膿瘍外径と浸出液重量は, 菌接種後48時間まで徐々に増加し, 病理学的にも経時的に細胞浸潤が増強した。また生菌数は, 24時間後から対照群より有意に増加した。以上の成績より, 1/8〜1/12まで白血球を減少させても, 生菌数の著しい増加がなく, 一定以上白血球数があれば感染症は容易に進展しないものと思われた。一方, 低蛋白血症群の生菌数は, 接種後早期に対照群より増加し, 低蛋白血症は感染症の進展に強く影響することが示唆された。
- 神戸大学の論文
- 1998-03-31
著者
-
吉位 尚
神戸大学医学部口腔外科
-
大塚 芳基
神戸大学医学部口腔外科
-
大塚 芳基
神戸大学 大学院 医学系研究科 器官治療医学 講座 顎口腔機能学 分野
-
大塚 芳基
新日鐵広畑病院歯科口腔外科
-
吉位 尚
兵庫県職員健康管理センター歯科
-
吉位 尚
神戸大学医学部口腔外科学講座
-
吉位 尚
神戸大学 大学院 医学系研究科 器官治療医学 講座 顎口腔機能学 分野
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