炎症巣における抗菌薬移行性に関する基礎的研究
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概要
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ヒト口腔感染症での各種抗菌剤(PIPC,CMZ,CEZ,CPZ,LMOX,CTRX,LCM)の膿汁移行性と,ラット頬部に作製したカラゲニン炎症(1日目,5日目)における滲出液と周囲の肉芽組織への移行性について検討し,以下の結果を得た。1. ヒト膿汁内濃度は,個体差が大きく全般に血清内濃度より低値を示したが,血清に比べて持続性がありプーリングする傾向が認められた。2. カラゲニン炎症巣におけるβラクタム剤(PIPC,CPZ,CTRX 20mg/kg,i. v.)の滲出液内濃度は,ヒト膿汁内濃度と同様の傾向を示したが,肉芽組織ではピーク以後血清と類似した移行性が認められた。3. 1日目と5日目の滲出液内濃度に差はなかったが,肉芽組織では1日目の方が持続した。4. 滲出液と肉芽組織におけるT1/2,TmaxおよびAUCはPIPC<CPZ<CTRXの順で,各薬剤の血清半減期の関係と一致した。5. 滲出液の血清に対する移行率をAUC比でみると,PIPC≒CPZ>CTRXの順で,各薬剤の蛋白結合率に反比例する傾向がみられたが,肉芽組織では逆の関係を示した。6. 今回の検討から,膿汁などの滲出液は必ずしも炎症組織自体の移行濃度を代表しておらず,むしろ血清内濃度を指標に投与方法を工夫する必要性が確認された。また,炎症初期の方が持続性を有しており,特に後期ほど投与間隔に対する配慮が重要と思われた。
- 神戸大学の論文
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