イレイン・タロン「中間言語の変異性に関する研究 : 言語テスト研究への示唆」
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概要
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中間言語の変異性に関する研究は、脈絡の変化によって第2言語学習者の言語産出は様々な特性において文法的正確性と流暢さにおいて体系的に変化することを示してきた。そのような体系的変異は、言語テスト研究に対して重要な示唆を提供する。例えば、言語テスト研究者たちはどの様な状況的特徴が中間言語の変異性の特にどの種の体系的変異に関わっているのか、または言語熟達度のどの部分に関わっているのかを探る共同研究を、第2言語習得研究者たちと行うことに興味を持っているであろう。この点について理解することは、テスト利用者に対して中間言語の変異性の問題について長期間の解決を与えるものである。その理由は、状況操作が学習者に提供する選択を理解することで、測定者たちは体系的に状況性質を操作することができるからである (Chapelle, 1999)。もうひとつの示唆は、現在の多くの第2言語習得研究の調査結果は、ある程度、疑いの目で見られるべきである。なぜなら、この論文で記述した様な中間言語の変異性を統制された研究は現在のところ皆無に等しく、結論を導き出すときに変異の示唆を勘酌するからだ。ここで特に取り上げたいのは、第2言語習得の普遍性の証拠を持つ研究者たちの主張である。そのような普遍性はおそらく存在するだろうが、その存在を示すためには、データ収集における社会言語学的な威力の存在を斟酌するか、または統制しなくてはならないであろう。もうひとつの示唆は、中間言語の変異性によってテスト課題は第2学習者への影響を与えるが故に、理想的なものになることは不可能であり、言語産出に対しても理想的になることは不可能である。つまり、集団基準準拠テストは厳しい批判の対象にならざるを得ない。ひとつの可能な解決方法としては、測定という活動をより直接的に実生活におけるテストの利用に関連づけることである。つまり、目標基準準拠言語運用テストへの移行である。この解決方法は、各学習者の単一の言語熟達を示す指標への追求と、他の学習者との比較をあきらめることである。そして、明確に定義づけられた課題において得られた一連の得点が、明確な手順で目標言語使用状況を反映したものに集約され、各学習者の能力が記述されるようになるかもしれない。最後の示唆としては、テスト得点はあくまでも近似値であるという認識をもって、学習者同士の比較は強く抑制されるべきである。学習者を厳密な意味で比較することは非常に困難なことである。なぜならば、現在の我々は言語学習者のテストにおける言語運用に対する状況要因の影響を十分に理解しているとは言えないからである。
- 愛知学院大学の論文
- 2000-07-25
著者
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