生薬の抗酸化物質に関する研究 : 第1報 スクリーニング試験および露蜂房の抗酸化能
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
現在の食品工業において,最も重要な課題となっている油脂の酸化防止を目的として,古来より保健強壮剤として知られている23種の生薬について,リノール酸乳化液を用いて酸化防止効果のスクリーニング試験を3段階に分けて行った。熱水抽出区分は茯苓を除いて,他の22種になんらかの酸化防止力が認められたが,とくに淫羊〓,何首鳥,地骨地,川〓,茶葉,当帰,破故紙,露蜂房の8種が顕著であった。この中,単位重量当たりの酸化防止力からみて有望であると思われるのは茶葉と露蜂房であった。アルコール抽出区分について顕著な効力が認められたのは露蜂房と破故紙であった。茶葉については既に報告があるので,本研究では露蜂房水抽出区分を取りあげ,次の結果を得た。1.有効成分は限外ろ過による分画では分子量1万以下の小分子区分に存在し,熱,アルカリ,希酸に対しては安定であるが,強酸に対しては不安定である。2.露蜂房の酸化防止力はリノール酸乳化液に対してPOV法,TBA法のいずれかの試験法においても認められた。3.露蜂房の単位重量当たりり酸化防止力は上記の両試験法において,α-トコフェロールよりやや優り,BHAの約1/4であった。4.露蜂房には重金属イオンに対するキレート作用はないが,重金属イオンの酸化促進作用を間接的に抑制する能力はある。5.露蜂房はその濃度に比例する電子供与能を有し,有効成分の抗酸化能は恐らくフェノール性水酸基によるものと思われる。 しかし,DPPHに対する電子供与能からみるとトコフェロールやBHAのそれの1/10以下であるので,露蜂房は電子供与能に比較して酸化防止力は強いと言える。6.Ames試験改良法によって露蜂房の突然変異誘起作用を検討した結果,完全に陰性であった。このことは露蜂房および肝臓におけるその代謝中間物には発癌性が全くないと結論できる。7.実際の食品に対する有効性を試験するために,マーガリンに添加してその効力を無添加の対照マーガリン,トコフェロール添加マーガリンと比較した。その結果,露蜂房はマーガリンの酸敗防止に実効があったが,その効力はトコフェロールよりやや劣っていた。
著者
関連論文
- 生薬の抗酸化物質に関する研究 : 第1報 スクリーニング試験および露蜂房の抗酸化能
- 畜産食品の保存に関する研究(科学技術研究所年報第9号)
- 畜産食品の保存に関する研究(第1報)
- タンパク質酵素加水分解物の抗酸化性に関する研究
- チーズの抗酸化物質について
- 畜産食品の保存に関する研究 : 第II報 粉乳に対するガス殺菌効果
- テクスチャーを考える-手ざわり・舌ざわり-
- キュウリ皮部のリパーゼ阻害物質に関する研究
- アビジン様物質の検索に関する研究-1-アフィニティ-クロマトグラフィ-による抗ビオチン抗体の分離
- チーズ中の核酸関連物質に関する研究 : II. ブルー,ゴーダおよびチェダーチーズの熟成中における酸可溶性核酸関連物質の変化
- 急性期におけるラット血漿アルブミンの生分解に関する研究
- 絹蛋白質由来のアンギオテンシン1変換酵素阻害ペプチドに関する研究
- Raphanus sativus種子レクチンの精製と性質に関する研究
- ス-パ-オキシドジスムタ-ゼの脂溶化とその抗酸化性に関する研究
- アビジン様物質の検索に関する研究-2-植物種子のアビジン様蛋白質
- 酵素免疫測定法によるチ-ズ中のレンニンの定量
- 天然に存在するリパ-ゼ阻害物質の検索-1-スクリ-ニングテストとダイコン(Raphanus sativus L.)から抽出した粗リパ-ゼ阻害物質の性質〔英文〕
- 緑豆に関する食品化学的研究-2-アミノ酸組成および化学的性質
- 緑豆に関する食品化学的研究-1-緑豆タンパク質の分離,精製
- 緑豆に関する食品化学的研究-3-緑豆澱粉の特性について