昭和53年度中京大学体育学部第1回学術研究会活動報告 : Erling Asmussen 博士講演要旨
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
a 筋の elasticity と performance 筋は, それを支配する神経の働きにより収縮して筋力を発揮する。この時, 筋は生化学的エネルギー源を必要とする。しかし, 同時に, 筋には物質としての弾性 (elasticity) があり, 他動的に伸張されればバネのように自動的に短縮する。この時, 筋は何らエネルギーを消費しない。たとえば, ヒトが垂直跳を行なう場合, 反動 (rebound) を用いた方が消費エネルギーが少なくて済む。ここに, 実際の運動場面において, 反動を積極的に利用してパフォーマンスを増加させる方向が示される。このことは次のような実験から確かめられた。まず第1に, 被検者は膝を軽く屈曲した状態からそのまま上方に jump した (A型)。次に, 膝を軽く屈曲した状態からさらに膝を深く屈曲し, 上方に jump した (B型)。最後に, 0.273mの台の高さからとび下りてすぐに上方に jump した (C型)。これらの条件下でのパフォーマンスをみると, A型では平均値で0.36m, B型では0.386m, C型では0.396mであり, C型が最も大きかった。同時に, 筋電図を記録してみても差異が認められた。フランスの生理学者Mareyは, この現象をすでに筋の弾性という観点から解釈していた。b 温度が筋の収縮速度および力におよぼす影響 中腰姿勢から垂直跳を行なわせた場合, そのパフォーマンスは温度とともに変化した。すなわち, 温度を29℃から40℃まで変化させると, パフォーマンスは直線的に増加した。一般に, 垂直跳は power のよい指標であり, 筋力と収縮速度の積としてあらわされる。温度の変化によって主に影響を受けるのは筋力の方なのか, それとも筋収縮速度の方なのかを確かめるために次のような実験を行なった。筋に, resting の状態から急激に等尺性筋力を発揮させた際の力曲線を記録し, その時の最大筋力 (Po) と, Poが5%から90%まで変化するのに要する時間 (t) を, 温度条件を種々変えて測定した。その結果, Poの値そのものは温度の影響を受けにくいのに対して, tは温度の影響を受け易いことが明らかとなった。すなわち, パワーの大きさは温度の影響を受けるが, これは筋力よりも筋収縮速度に変化が生じるからである。また, 力曲線を分析してみると, 温度が高い時には, 比較的短時間でPoの近くに達するのに, 温度が低い時にはこの時間が延長した。さらに, 筋が弛緩する場合, 温度が高い時には早くrelax し, 温度が低い時には筋はなかなか弛緩しにくいことが明らかとなった。この種のデータは実際の運動場面でも非常に応用性の高いものであることが示唆された。
- 中京大学の論文
- 1979-02-01
著者
関連論文
- 老齢化が精密把握時の摘み力適応調節に及ぽす影響
- 18.精密把握運動における摘み力の安定試技数の検討
- 把握面の滑り易さと摘み力との関係からみた物体保持中の摘み力制御について
- 101.種々の把握面変化からみた精密把握運動の摘み力制御について
- 182. 走運動が赤血球膜浸透圧脆弱性に及ぼす影響(血液・免疫, 第61回 日本体力医学会大会)
- 169.長時間の運動が赤血球膜浸透圧脆弱性に及ぼす影響(血液・免疫,一般口演,第60回 日本体力医学会大会)
- 疾走能力の発達 : 走り始めから成人まで(第52回大会キーノートレクチャー : 発育発達)
- 010 幼児の行動の観察法による検討 その1 : 主体的な活動場面について
- 昭和53年度中京大学体育学部第1回学術研究会活動報告 : Erling Asmussen 博士講演要旨
- 18. 体格差に即した疾走フオームに関する基礎的研究 : 比下肢長の差による疾走フオームについて
- 647. 女子のハードル技術に関する比較研究
- 625. 三段跳競技者の技術に関する比較研究
- 623. 陸上選手の指導に関する研究 (その3) : コンディショニングに関する考察
- 495. 性周期と女子トレーニングについての研究 : その1 女子競技者の性周期に伴なう機能の変動
- 三段跳学習指導の実験的研究 (その2) : 高等学校における指導効果の比較
- 36. 筋放電間隔記録装置(自作)による姿勢反射の検出
- Electrotachograph の Ergometry への導入
- 4108 筋作業強度における脳波の変動(4.運動生理学,I.一般研究)
- 432 一定重量負荷保持時における脳波の変動特性
- 気流が軽運動時の酸素摂取量水準におよぼす影響 : 5.運動生理学に関する研究
- ヒトの情緒活動に伴う身体諸機能の変動特性 : 笑いについて : 11. 運動生理学に関する研究
- 舞踊における回転動作の研究-2-fuette en tournantについて
- 機械的外来刺激 (含筋マッサージ) の生理学的考察と将来展望
- 運動様式の違いが赤血球膜浸透圧脆弱性に及ぼす影響(血液・免疫, 第59回日本体力医学会大会)
- 低温環境における運動前の受動的身体加温が高強度運動中の生理的応答に及ぼす影響
- アセチルコリン投与によるヒト局所皮膚発汗、局所皮膚温、局所皮膚血流変化の解析
- 07発-3A-P02 両腕支持時の身体動揺と体支持持続時間及び握力の関係について(07.発育発達,一般研究発表抄録)
- 視覚から得られる物体の「大きさ」情報が精密把握運動時の摘み力制御におよぼす影響
- 415.物体の大きさが精密把握持ち上げ運動時の摘み力制御に及ぼす影響
- 13G20916 バーチャル・リアリティで視覚情報を制御された環境下での小物体操作時の摘み力制御について
- 30A30703 小物体持ち上げ運動時の摘み力制御における視覚情報の役割について
- 229.位置補正動作下の反射性活動
- 227.反応動作および自発動作における動作前筋電休止期の出現率について
- 041なD08 動作前筋放電休止期の出現を修飾する要因について : 動作前筋活動水準および膝関節伸展角速度からの検討
- 4. 視覚反応時間における中枢過程の観察(神経・感覚)
- 100.随意動作前筋放電休止と動作速度の関係について
- トポグラフによる随意的筋弛緩脳電位の検出に関する基礎的研究
- 心拍数に基づいて全身持久性トレーニング負荷を決定する際の作業流れ図 : 碧南市健康増進事業における実践例から
- 随意的筋弛緩に伴う脳の電位変化の検出に関する基礎的研究
- 運動処方のための年齢・運動強度別推定心拍数早見表
- 筋疲労回復過程の筋電図学的分析
- 直立時動揺の年齢による変化
- 持続性筋牧縮の調整機構 : 発射間隔法による
- 直立時動揺と疲労
- Dynamic balance とその訓練効果