撥音・促音の表記について : 『尾張国郡司百姓等解』の場合(人文社会科学編)
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概要
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『尾張国郡司百姓等解』の古い写本は早大本、東大本および真福寺本の三本であって、いずれも鎌倉時代末頃のものである。この三本に見られる撥音・促音の表記について調べる。撥音の [n] [m] の音韻的区別は鎌倉時代には失われるが、表記的には「ン」に統一される過渡期である。この三本においても、「ム」「ン」の書き分けに混乱がみられるが、最も時代の下る真福寺本には、「ン」表記が優勢になっている。一方、促音表記は、早大本・東大本は「ツ」表記よりも無表記の方が優勢であるが、真福寺本は無表記の外、「レ」表記が見られ、平安時代の名残りを留めている。真福寺本は「ン」表記の新しい要素の外、「レ」表記の古い要素をも合わせ持っている。この古い要素は、ヲコト点を存することなど、親本の訓点を受け継いだものとみられる。
- 2003-03-01
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