原風景としての幼児期 : 保育者養成課程学生の思い出し記録から(I)
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概要
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南(1995)は子ども時代の意味を,様々な人生の局面において回帰するものとしてその重要性を指摘している。特に保育者を志す学生が記億にとどめている子ども時代の原風景を辿っていくことは,これからの自身が行う保育の根幹を探ることになるのではないだろうか。そこで本研究では,将来保育者を志望する学生の幼児期の思い出し記録の分析を通して,幼児期に体験した遊びや幼児期に出会った保育者像を明らかにすることで,保育者養成の教育内容に示唆を得ようと考えた。具体的には(1)遊びの思い出(2)保育者像の特徴を自由記述文より明らかにし,本学学生の学習課題について検討する。調査の結果,遊びの思い出の特徴に関しては「造形的遊び」に関する回答が,最も多いという結果であった。また個々の回答数と遊び内容の記述の関係からは,(1)低回答群は「造形的遊び」の割合が高く,(2)高回答群は「遊具遊び(大)」の割合が高いという結果であった。更に(3)高回答群は「伝承遊び」「自然,水遊び」の割合が高い結果も得られた。次に保育者像に関しては,性格格に関する記述が最も多く,中でも「やさしい」イメージを持っているものが半数以上であるが,一方「厳しい・恐い」というイメージを抱いているものも少なくない。また一般的な保育者像として定着している「ピアノが上手で活動的である」という印象を持っているものも多い。これらのことから,保育者を志望する学生は遊びのイメージとして主体的な取り組み(自由遊び)が思い出となっているといえる。主体的な活動経験は次の発達ステージヘの基礎となることからも,保育者としてその経験の重要性を意識化することが必要であるといえる。更に保育者養成と重ねて考えた時,如何に子どもが主体的に活動できる環境を保障できるか,このことが保育者として非常に重要であることを再認識しなければならないといえるだろう。
- 2005-03-15
著者
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