『古事記』における音読注の機能
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概要
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『古事記』の音読注は、全体から見るならば、統一した注記形式になっていない。だが、それは、大きく、A音読する用字数、ないし用字を指定するもの、B音読する神名・人名を指定するもの、に分けられ、ABそれぞれにおいて、注記形式が類型化している。これらの類型は、施注対象、施注の位置等において傾向性が認められる。音読注は、基本的に訓字と借音字とを弁別することによって読解を容易にする機能を担っていたと考えられるが、その他に、施注対象を際立たせる標識としての機能や意味の切れ目を明示する機能を担う例も存する。これらの機能を勘案するならば、『古事記』序文の「辞理〓レ見以レ注明、意況易解更非レ注」は、換喩的な文言として位置付けることができよう。音読注は読解を容易にする機能を担うけれども、しかし、音読注がなければ借音字表記箇所の読解に支障を来すというものではない。その施注方針は厳密でなく、ゆるやかなものであったと判断される。
- 九州女子大学・九州女子短期大学の論文
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