『万葉集』における和化された字義を担う字
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
潮水の意の「塩」、数える意の「読」など、漢語の本来的な字義に意味的に対応していない和化された字義を担う字は、「古事記」のみでなく、「万葉集」にも見える。「万葉集」の和化された字義を担う字の多くは、本来的な字義に意味的に対応した狭義の正訓字としての用法も存し、その点で「古事記」の和化された字義を担う字と性質を同じくする。-万葉集」の和化された字義を担う字の中には、本来的な字義との齪嬬が意識されていたと覚しき例も存するが、総体的には、慣用化を否定していない段階にあり、この点でも-古事記」と同質であると判断される。だが、その一方で、「万葉集」の和化された字義を担う字の中には、「古事記」の和化された字義を担う字とは異なった様相を呈する字も存する。たとえば、「万葉集」には、羨ましい意の「乏」や、不安定な心地、不安定な状態の意の「空」のように和化された字義が心的状態を表す例が見える。また、同一の和語を表記するのに、和化された字義を担う字と狭義の正訓字とが併用される例も少なくない。かような現象は、「古事記」と「万葉集」両書における使用語彙の質的な差、および、表記意識の差に基づくものと理解される。
- 九州女子大学・九州女子短期大学の論文
著者
関連論文
- 東洋と西洋の家族像 : 受講者参加型講座の試み
- 正倉院文書における助数詞の字体 : 「條」「条」、「〓」「斗」を中心に
- 鹿持雅澄における風土記の受容--『南京遺響』『万葉集古義』を中心に
- 『豊後国風土記』の用字--熟字の使用を中心に
- 国語の授業における比喩表現の指導について : 中学校国語を中心に
- 国語教育におけるの指導について
- 中学校国語科における漢字指導に係る用語の指導について : を中心に
- 『古事記』における大字の使用について
- 風土記の数量表現
- 月借銭解における数字の使用
- 『播磨国風土記』の熟字
- 外国人児童生徒を視野に入れた国語科教育と日本語教育
- 『風土記』の仮名表記--固有名詞以外の語の仮名表記を中心に
- 『古事記』における音読注の機能
- 『万葉集』における和化された字義を担う字
- 地名説明記事と地名--『播磨国風土記』を中心に
- 『古事記』の借音字表記における表記意識
- 『古事記』の〈添え字〉