気管支鏡下ガーゼ綿球ブロッカーによる病巣区域気管支閉塞法 : wet case の術中管理として

概要

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胃癌の手術を受けた56歳の男性で発熱と多量の膿性痰, 呼吸困難を訴えて受診した。胸部レ線写真で吸引性肺炎を疑い, 気管支鏡と選択的気管支造影検査を行った。その結果, 左横隔膜下膿瘍が左肺膿瘍に進展し, さらに右肺の吸引性肺炎を起こしたものと診断した。手術適応について多量の膿性痰のために仰臥位は不能で坐位による経口挿管の後, 気管支鏡下に膿性痰の吸引を行い, 膿性痰の流出する左B^6, B^9, B^<10>の区域気管支の各々をガーゼ綿球で閉塞した後, 手術を行った。開胸の結果, 横隔膜下膿瘍が横隔膜を穿孔し, 肺に進展して左S^<10>に膿瘍を形成し, 周辺部にも数個の娘膿瘍を形成していた。横隔膜下膿瘍の郭清と左下葉切除を行ったが, 術中喀痰の気道内流出もなく安全に手術しえた。本法は気管支鏡とガーゼ綿球を用いるだけで病巣区域気管支の閉塞ができ, wet caseにおける手術時や, 喀血例に対する区域気管支ブロックに応用できるものと思われる。
日本呼吸器内視鏡学会の論文
1989-04-15