小型チタンネジを固定源としたイヌ下顎前臼歯の実験的圧下移動 : 歯の移動様相とネジ周囲骨の形態計測

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チタンは生体適合性が良好な材料であるため, 多くの歯科臨床で用いられており, 矯正臨床においてもインプラントやスクリューを固定源とした歯の移動が普及しつつある.われわれは小型のチタンネジを固定源とした歯の移動を臨床応用するのに先立ち, イヌを用いて下顎臼歯の圧下モデルを作り, チタンネジが臼歯の圧下移動の固定源として十分に機能することを報告した.しかし, この報告では限られた個体数で移動歯の組織やネジ周囲骨の評価など種々の検討を行ったため, 統計学的な処理ができなかった.そこで本研究では前報と同一の方法で雄性ビーグル成犬(5頭)の下顎両側第三前臼歯(P3)の頬舌側歯槽部に小型チタンネジ(直径1mm, 長さ4mm)を植立し, これらを固定源とした歯の圧下移動を行い, P3の移動様相を二次元的に評価するとともにネジ周囲の骨形態計測を定量評価した.その結果, 16週間におよぶ5個体10歯のP3の圧下量は平均で5.1mmであり, 1個体の右側を除いてほぼ歯軸(長軸)方向に圧下された.ネジ周囲の骨形態計測における石灰化率(二次元計測)は, 矯正力の付与に関係なく一定であった.また, 舌側の石灰化率が頬側に比べ統計学的に有意に高い値を示し, ネジ先端1/3では他の部位よりも有意に低い値であった.以上より, 植立チタンネジはすべて下顎臼歯の圧下移動の固定源として有効に機能し, 脱落や動揺はみられなかった.また, ネジ周囲の骨結合状態は従来のデンタルインプラントをイヌ下顎歯槽部に植立した場合の約半分で, 皮質骨の密度や厚み, インプラントサイズとの相関性をうかがわせる所見が得られたが, 矯正力付与による影響はみられなかった.
日本矯正歯科学会の論文

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