乳酸・蟻酸の単独ならびに混合溶液によるエナメル質脱灰の経時変化

概要

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有機酸の中では高率に産生される強酸である乳酸と酸の解離指数の低い蟻酸との単独溶液ならびに混合溶液が,エナメル質脱灰の様相にどのような影響を及ぼすかを明らかにする目的で,単一切片法を用いて初期齲蝕の形成過程を経時的に検討した。ヒト・小臼歯より厚さ100μmのエナメル質試料を作製した。このサンドウィッチ試料の脱灰を,乳酸単独溶液,乳酸と蟻酸との混合比が3:1,1:1,1:3及び蟻酸単独溶液で37℃で24時間行った。脱灰溶液中のpHは4.5,最終的な酸の濃度は0.1Mに調整した。脱灰処理にともなうミネラル量の変化は,マイクロラジオグラフィにより定量的に評価し,マイクロラジオグラム(MR)の撮影は3時間毎に24時間後まで行った。経時的なミネラル量の変化は,脱灰溶液中の蟻酸の量が増加ナるにしたがい,表層部におけるミネラル量(Max.)および脱灰部における最小ミネラル量(Min.)は減少し,脱灰深度(Ld)は深くなる傾向であった。さらに,ミネラル喪失量(⊿Z)は,増加傾向であった。以上の結果より,エナメル質脱灰には,乳酸,蟻酸の混合比の違いによって,脱灰量と脱灰様相が異なることが明らかとなった。
有限責任中間法人日本口腔衛生学会の論文
1995-04-30