マウス脳組織におけるヒアルロン酸リッチマトリックス構成分子の局在

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脳はヒアルロン酸(HA)に富んだ組織である。HAによる細胞外マトリックスの構築は培養細胞や軟骨組織、卵丘・卵母細胞複合体で観察され、HAリッチマトリックスと呼んでいる。これはプロテオグリカン、リンクプロテイン、CD44(HAレセプター)、さらに、血清成分のインターαトリプシンインヒビター(ITI)の長鎖がHAに共有結合したSHAP-HA複合体により形成されている。特にSHAP-HA複合体は細胞とHAリッチマトリックスとの相互作用を強める働きがある。ところで、SHAP-HA複合体の形成には血清成分のITIや酵素が必要不可欠であるが、脳組織においては血液脳関門の障害があり、その存在は明らかではない。RT-PCRより脳組織でのITIの構成分子であるビクニンと長鎖タンパク質のmRNAの発現は確認されている。したがって、脳組織でのSHAP-HA複合体形成の可能性はある。今回、SHAP-HA複合体を含め、他のHAリッチマトリックス構成分子の分布状態を調べた。ビクニンノックアウトマウスはSHAP-HA複合体を形成することができないことから(j.Biol.Chem,2001,276,7693)、これを対照にして、HA、SHAP、ビクニン、リンクプロテイン、CD44、HA結合型プロテオグリカン(PG-M/バーシカン)の分布を免疫組織染色法を用いて調べた。脳におけるHAの分布は均一ではなく、特に海馬と大脳前部に強い染色が観察され、大脳後部にはほとんどHAの染色は見られなかった。また、これらの部位にはSHAPの染色は見られず、HAにSHAPの結合はないことがわかった。しかしSHAP-HA複合体の染色に脳梁の前部、橋核部、小脳にみられた。一方、ノックアウトマウスにおいては奇妙なことに海馬、大脳前部、脳梁部にHAの染色は見られず、後部に弱い染色がみられた。橋核部、小脳では正常とHA分布の差はなかった。従来、比較的に均一と思われていたHAの分布に部位特異性が観察されたこと、原因は不明であるがその分布がビクニン合成によって影響を受けること、またSHAP-HA複合体の脳梁の前部、橋核部、小脳における局在が示唆されたので報告する。
日本結合組織学会の論文

マウス脳組織におけるヒアルロン酸リッチマトリックス構成分子の局在

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