炎症性サイトカイン(TNF-α,IL-1β)による,表皮角化細胞特異的なVII型コラーゲン遺伝子(COL7A1)発現調節機構
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概要
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皮膚のVII型コラーゲンは表皮角化細胞と真皮線維芽細胞で生合成され細胞外へ分泌される。次いで,基底膜領域へ移動,結合してアンカリングフィブリルを形成。基底膜と真皮の結合を強固にし,皮膚の構築を維持する。最近,VII型コラーゲン遺伝子(COL7A1)の発現は皮膚の再生・修復,炎症及び老化により変化することが明らかになり,これらの機構への関与が示唆されている。我々はこれまで,これらの機構を解明する一端として,関連が知られている成長因子(TGF-β)と炎症性サイトカイン(TNF-α,IL-1β)によるCOL7A1の発現調節機構を解析してきた。その結果TGF-βと各炎症性サイトカインはそれぞれ真皮線維芽細胞のCOL7A1の発現を促進し,特に,TGF-βとTNF-αは,転写因子Smad3/4,NF-κBをそれぞれ誘導し,これらが互いに相加/相乗的にCOL7A1の発現を転写レベルで促進していた。一方,表皮角化細胞のCOL7A1の発現に関してはTGF-βが促進すること以外の詳細は不明である。そこで本研究では,炎症性サイトカインTNF-α及びIL-1βによる表皮角化細胞のCOL7A1発現調節機構について解析した。最初に,培養表皮角化細泡中に各炎症性サイトカインを添加してCOL7A1の発現の変化をNorthem blot法により解析した。その結果TNF-α及びIL-1βは,COL7A1の発現を抑制し,しかも両者の間には相加作用を認めた。また,この抑制作用は濃度及び時間依存性であった。次に,培地中のVII型コラーゲンタンパク量をWestem blot法により解析した結果,TNF-α及びIL-1βともに培地中への分泌を抑制していた。すなわち,この各炎症性サイトカインの抑制作用は,mRNAレベルのみならずタンパク質レベルにおいても認められた。この抑静機構の詳細を更に検討するため,タンパク質合成阻害剤cycloheximideを培地に添加した結果,TNF-α及びIL-1βの抑制作用はcycloheximideにより完全にブロックされ,作用発現にはタンパク質の新生を必要としていた。この様に,TNF-α及びIL-1βのCOL7A1発現調節機構は,表皮角化細胞とでは全く異なり,細胞特異的であった。さらに,COL7A1の発現を促進するTGF-βと,各炎症性サイトカインとの相互作用について検討した。TNF-α及びIL-1βはそれぞれ,TGF-βのCOL7A1発現促進作用を阻害すると予想されたが,解析の結果,逆にTGF-βの促進作用をさらに増強した。この結果から,TNF-α及びIL-1βはTGF-βとの共存下では,単独で作用させた場合とは異なるシグナル径路を活性化して,表皮角化細胞におけるCOL7A1の発現を促進している可能性が考えられた。現在,これらの炎症性サイトカインが表皮角化細胞におけるCOL7A1の発現調節を転写レベルで行っているか,プロモーター領域を解析中である。
- 日本結合組織学会の論文
著者
-
今 淳
弘前大学大学院医学研究科 附属高度先進医学研究センター・糖鎖工学講座
-
花田 勝美
弘前大学大学院医学研究科
-
花田 勝美
弘前大学医学部
-
佐々木 秀之
弘前大学医学部皮膚科学講座
-
今 淳
弘前大学医学部皮膚科学講座
-
花田 勝美
弘前大学 皮膚科学教室
-
花田 勝美
弘前大医
-
今 淳
弘前大学医学部医学科生化学第一講座
-
武田 仁志
弘前大学医学部皮膚科教室
-
今 淳
こんあつし建築設計事務所
-
今 淳
弘前大学糖鎖工学
-
花田 勝美
弘前大学医学部皮膚科
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