Sp-family(sp1/sp3)によるVII型コラーゲン遺伝子の転写調節機構について
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概要
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VII型コラーゲンは表皮角化細胞と真皮線維芽細胞で生合成され,基底膜領域のアンカーリングフィブリルを形成し,基底膜と真皮の結合を強固にして皮膚の構築を維持している。VII型コラーゲン遺伝子(COL7A1)の転写調節機構に関し,1)COL7A1はTATA boxとOCAAT boxを欠く,2)転写開始点の上流-512/-505のプロモーター領域に存在するGT boxがCOL7Alの転写のcis-acting elementであり,この領域には転写因子Splが結合することがこれまで明らかになっている。しかしこのGT boxを欠失させても,その転写活性はかなり低下するが完全には消失しない。そこで今回我々は,COL7A1の転写に関わる更なるcis-acting element及びtrans-acting factorの存在を予想してCOL7A1のプロモーター領域を更に解析した。-1804/+92のプロモーター領域が挿入されたルシフェラーゼベクター(-1804COL7A1/Luc)とその欠失変異体を培養表皮角化細胞及び真皮線維芽細胞にそれぞれ導入し,ルシフェラーゼアッセイ法を行った結果,-230/-144の領域もCOL7A1の基本転写に重要なことが明らかになった。この領域をプローブにしてゲルシフトアッセイ法を行うと,両細胞とも核タンパク質/プローブ複合体の4種類のバンド(移動度の遅い方からshift-1,-2,-3,-4)が検出された。既知転写因子のコンセンサスオリゴを用いた干渉実験で,Sp1のコンセンサスオリゴの添加は各バンドを消失させ,ゲルスーパーシフトアッセイ法ではshift-1にSp1,shift-2,-3,-4にSp3が結合し得ることが示された。そこでコンピューター解析でこの領域を詳細に解析すると,Sp1結合部位の可能性があるGC boxが2ヶ所存在した(-169/-162(boxA),155/-150(boxB))。そこで-524COL7A1/Lucベクターの各boxに変異を導入してルシフェラーゼアッセイ法を行うと,boxAに変異を入れた場合は明らかな活性の低下は無く,boxBで60%,boxAとBの両方では更に45%に低下した。しかもGT boxを含むすべてのboxに変異を導入すると活性は20%にまで低下した。最後にSp1とSp3の発現ベクターを,これらの活性の持たないDrosophila SL2細胞に,-177COL7A1/Lucと共に導入した結果Sp1はCOL7A1の転写を活性化し,Sp3はSp1の作用を抑制した。以上から,表皮角化細胞と真皮線維芽細胞におけるCOL7A1の基本転写は共に,Sp-family(Sp1,Sp3)が各GT/GC boxに結合することで調節を受けていた。しかもGT/GC boxすべてに変異を導入しても転写活性が依然検出されることは,更に未知のcis-acting elementの存在することと,各boxが転写のイニシエーションには関与していない可能性が示唆された。
- 日本結合組織学会の論文
著者
-
今 淳
弘前大学大学院医学研究科 附属高度先進医学研究センター・糖鎖工学講座
-
花田 勝美
弘前大学大学院医学研究科
-
花田 勝美
弘前大学医学部
-
佐々木 秀之
弘前大学医学部皮膚科学講座
-
今 淳
弘前大学医学部皮膚科学講座
-
花田 勝美
弘前大学 皮膚科学教室
-
花田 勝美
弘前大医
-
今 淳
弘前大学医学部医学科生化学第一講座
-
武田 仁志
弘前大学医学部皮膚科教室
-
今 淳
こんあつし建築設計事務所
-
今 淳
弘前大学糖鎖工学
-
花田 勝美
弘前大学医学部皮膚科
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