多包虫感染に対するゴールデンハムスターの感受性について
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概要
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多包虫(Echinococcus multilocularis Leuckart, 1863, 幼虫)に対し, 感受性が極めて低いとされていたゴールデンハムスターを用い, 虫卵経口投与(一次多包虫症)および頭節腹腔内接種(二次多包虫症)を行ない, 次のことが明らかとなった. 1. 虫卵経口投与により, 雄13例中9例, 雌19例中15例に肝病巣を認めた. 多くは死滅虫体による器質化結節とすべき病巣であったが, 感染後60日の7例中3例に多包虫嚢胞を認め, うち2例は多房化していた. ゴールデンハムスターの感受性は高くないが, 少なくとも一部の例で, 多包虫が感染後60日までは発育することが明らかとなった. 2. 頭節腹腔内接種により, 雄12例, 雌9例のすべてに感染を認めた. 接種後30日で初期繁殖胞, 一部で初期頭節形成が認められ, 60日後に若干の成熟頭節, 100日後では十分に発育した多数の成熟頭節が出現した. しかし一方, 病巣中心部においては, 感染後100日ですでに頭節の死滅が始まっていた. 感染後8カ月例では, 十分に発育した嚢胞が, おもに病巣辺縁部に認められたが, 多くの頭節は死滅過程をたどり, また外膜層の壊死領域に石灰, コレステリンの沈着が認められた. 以上のことから, 虫卵経口投与によって, 従来知られているより, さらに多包虫の発育が進展すること, また頭節腹腔内接種によって, 高い感受性を有することが明らかとなった. 稿を終えるにあたり, 御指導, 御校閲をいだだいた北海道大学獣医学部家畜寄生虫病学教室山下次郎教授ならびに大林正士助教授に深謝する. なお本研究の要旨は, 第19回日本寄生虫学会北日本支部大会において発表した.
- 社団法人日本獣医学会の論文
- 1974-04-25
著者
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