鶏の病原性大腸菌に見られた酸により誘発される自家凝集性
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
鶏の病原性大腸菌にトリプチケースソイブロス(TSB)での静置培養で, 自家凝集が見られた. そのうち1株(PDI-386 )について, その自家凝集性について, さらに検討した. 培養液中のブドウ糖の分解による酸が, 自家凝集を誘発した. ブドウ糖を含まないLブロスで培養した菌は, 培養後に酸を加えることによって自家凝集し, 潜在的に自家凝集能を有することが分かった. 自家凝集性を有する親株(Agg)は, TSB寒天上でラフ型に似た辺縁不整な小集落を形成したが, これより派生した非凝集variant(Nag)は, スムーズ型の正円な大集落を形成した. TSB寒天上でNag集落はAgg集落から容易に出現した. TSB中での継代では, 自家凝集性は非常に不安定だったが, Lブロス中では安定に継代された. 電子顕微鏡下で, Agg菌には, 20μm以上の長い線毛が観察された. しかし, 自家凝集性の発現は, モルモットの血液を用いたマンノース感受性赤血球凝集反応と一致しなかった. Nag菌をLブロスで室温10日以上培養すると, 自家凝集性の回復が見られた. Agg菌とNag菌の間で, 菌表面の疎水性度, 膜蛋白とLPSのSDS -ポリアクリルアミド電気泳動像およびプラスミドプロファイルに差は無かった. Agg菌はNag菌よりも病原性が強かった. 本報告の自家凝集性は, 試験管内で不安定であり, 鶏に対する大腸菌の病原性を評価するときに, 注意すべき性状であると思われる.
- 1992-06-15
著者
-
関崎 勉
農林水産省家畜衛生試験場
-
野々村 勲
農林水産省家畜衛生試験場
-
関崎 勉
(独)動物衛生研究所細菌・寄生虫病研究チーム:岐阜大学大学院連合獣医学研究科
-
中里 ユミ
農林水産省家畜衛生試験場鶏病支場
-
中里 ユミ
農林水産省家畜衛生試験場鶏病支場:(現)農林水産省家畜衛生試験場
関連論文
- 牛乳腺上皮への黄色ブドウ球菌の付着に対するSraPの役割(細菌学)
- 実験動物由来薬剤感受性大腸菌に存在する Cryptic プラスミドのRプラスミド化について
- Actinobacillus pleuropneumoniaeから分離された大腸菌K12株に溶血性を付与するDNA
- Facklamia sourekiiの泌乳牛からの同定(細菌学)
- 馬伝染性子宮炎の迅速診断のためのPCR法の開発
- Actinobacillus pleuropneumoniae外膜リポ蛋白遺伝子(omlA)の遺伝的多様性(短報)
- Rhodococcus equiの改良エレトロポレーション(短報)
- 2. 大腸菌コンピーテントセルの凍結および凍結乾燥による保存性(昭和58年度第29回凍結及び乾燥研究会特別講演及び研究報告)
- 鶏の病原性大腸菌(血清型O78)からの1型線毛の分離と性状解析
- 豚のBordetella bronchiseptica由来非伝達性5剤耐性Rプラスミドについて
- 鶏の病原性大腸菌(血清型O78)の1型線毛(Fpul1)サブユニット遺伝子のDNA塩基配列
- 鶏の病原性大腸菌に見られた酸により誘発される自家凝集性
- プラスミド脱落に関連した鶏の病原性大腸菌の病原性の低下(短報)
- ノトバイオート豚での大腸菌の腸管毒素産生プラスミドの伝達(短報)
- 下痢子牛および健康牛における毒素原性大腸菌の分布
- 牛由来大腸菌からの耐熱性腸管毒素産生プラスミドの分離と性状について
- 大腸菌抗原分析