大気中微小粒子と粗大粒子の質量および各種元素濃度の特徴と季節変化 : 甲府市での事例解析
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概要
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大気浮遊粒子状物質濃度が高く,内陸部盆地に位置する甲府市において,健康影響が強く懸念される粒径2.5μm以下の大気中微小粒子(PM2.5)と,従来から測定されてきた10μm以下の粒子(PM_<10>)の質量濃度を,1997年7月から1998年8月まで測定するとともに,著者らが開発した簡便な蛍光X線法を適用して,両者に含まれる各種元素濃度の特徴と一年を通じた変化を明らかにした。PM_<2.5>の質量濃度は,PM_<10>の61〜90%(年平均75%)を占め,微小粒子が粗大粒子(2.5〜10μm)の平均3倍の寄与を示すとともに,その年平均値(27μgm^<-3>)は米国のPM_<2.5>に関する新基準(15μgm^<-3>)を大きく上まわった。PM_<2.5>質量濃度はPM_<10>とよい相関を示し,平均としてはPM_<10>から推定できると思われた。S,Cl,Zn,Br,Pbの5元素は微小粒子中に偏在し,V,Cu,Kも微小粒子中に多く,人為的寄与が高いと推定された。特に,PM_<2.5>中のCu,Zn,Br,Pbは,地殻基準の濃縮係数(EF値)が自動車排出粒子の値と同様に極めて大きく,それらの大小関係も一致したことから,自動車の高い寄与が示唆された。また,SとVは夏季に,その他の元素は晩秋から初冬に高値を示し,それぞれ高い相関があった。Mg,Al,Si,Ca,Ti,Feの6元素は粗大粒子に多く含まれ,主に土壌起源とされたが,Caは土壌以外の寄与も推定された。PM_<10>におけるこれらの元素濃度の増大から黄砂の寄与を確認できた。また,Na,Cr,Mnは粗大粒子と微小粒子に同程度含まれ,主に土壌起源が推定されたが,Naは光化学反応が,Cr,Mnは土壌以外の起源が推定される時期があった。
- 社団法人大気環境学会の論文
- 2000-09-10
著者
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岩附 正明
山梨大学大学院医学工学総合研究部工学学域
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岩附 正明
山梨大学工学部物質・生命工学科
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岩附 正明
山梨大学工学部
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京谷 智裕
山梨大学工学部物質・生命工学科
-
京谷 智裕
山梨大学工学部物質・生命工学科:(現)科学技術振興事業団科学技術特別研究員山梨県環境科学研究所地球科学研究室
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