青年海外協力隊員の職業性ストレス : 職業性ストレス簡易調査票を用いて
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概要
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青年海外協力隊の事業は,1965年に外務省所管(後に国際協力機構Japan International Cooperation Agency)として途上国の衛生および社会経済状況の改善を目的に発足されたボランティア活動事業である. 近年, 派遣国で活動する隊員において, メンタルヘルスに関する問題が増加傾向にある. 過去の調査から, ストレス要因として仕事が重要な要因であることは推測されていたが, これまで派遣中の隊員を対象とした職業性ストレスに関する研究はなかった. そこで, 隊員におけるストレスおよび仕事におけるストレス要因について検討するために, 2003年10月から12月にかけて, 横断的疫学研究を実施した. 対象者は, 調査時世界67ヵ国に派遣中の20〜40歳の全隊員1,084人であった(男性485人, 女性599人;派遣期間がそれぞれ11ヵ月, 7ヵ月, 4ヵ月の隊員は316人, 332人, 436人).対象者の約80%は, 情報技術, 医療福祉, 教育, 研究などの専門技術をもち, 派遣国の職場組織の中で活動を行っていた. 職業性ストレスの尺度には, 日本人勤労者を対象に開発された職業性ストレス簡易調査票を用いた. 加えて, 属性, 人格特性(エゴグラム)および他の健康情報についての質問項目も含めた. 回収率は, 86.9%であった. 心理的ストレスについては, カットオフ値を越えた者の割合は5.5%(n=49)であった. 平均値(±標準偏差)は, 男性4.22(±3.98), 女性4-89(±4.40)(p0.05), 派遣期間の長い順にそれぞれ5.15(±417), 5.05(±4-45), 3.93(±4.40)(pα0!)であった. 身体的ストレスについては, カットオフ値を越えた者の割合は, 2.9%(n=26)であった. 平均値(±標準偏差)は, 男性1.10(±1.68), 女性1.41(±1.74)(p0.01), 派遣期間の長い順にそれぞれ1.47(±1.77), 1.35(±1.89), 1.11(±1.55)(p0.05)であった. さらに, 多変量ロジスティック解析を用い心理的ストレス反応と関連する要因について検討を行ったところ, 仕事の負担の高さ, 対人関係の悪さ, 仕事の適合性の低さ, 上司や同僚からのサポートの低さ, 生活の不満足といった要因が認められた. 本研究により, 心理的ストレス反応のカットオフ値を越えた者の割合は身体的ストレスよりも高いことが示唆された. また, 日本における勤労者と同様,本研究の隊員においても心理的ストレスと仕事におけるストレス要因との間に有意な関連が示唆された.以上より, ストレス関連によるメンタルヘルスの問題や疾病の発症を予防するという観点から, 心理的ストレスを有する早期の段階で, 心理面での健康状態の確認やカウンセリングが重要であると考えられた. さらに, 派遣前の研修の中で,隊員に対するストレス対処法について教育することも考慮すべきと思われる. (産衛誌2004;46:191-200)
- 2004-11-20
著者
-
牧野 真理子
牧野クリニック
-
筒井 末春
人間総合科学大学人間科学部
-
筒井 末春
東邦大学心療内科
-
筒井 末春
東方大第2内科
-
筒井 末春
東邦大心療内科
-
筒井 末春
人間総合科学大学:東邦大学
-
筒井 末春
東邦大学
-
土井 由利子
国立保健医療科学院疫学部
-
牧野 真理子
国際協力機構健康管理センター
-
加藤 章子
国立保健医療科学院疫学部
-
土井 由利子
国立保健医療科学院 研修企画部
-
筒井 末春
東邦大学医学部付属大森病院心療内科
-
牧野 真理子
青年海外協力隊診療室:jica
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