神奈川県下事業場の化学物質管理におけるMSDSの利用状況と問題点
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概要
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神奈川県下の従業員50人以上の265の化学物質使用事業場の産業医および衛生管理スタッフに化学物質管理に際してのMSDSの利用状況およびMSDS情報の作業者への周知徹底方法等について,個別に回答を求めるアンケート調査を実施し,MSDSがどのような体制で化学物質の労働衛生管理に用いられているか,更にMSDS情報を作業者に周知するために,現行のMSDSに対してどのような改善を要望しているか,また,当センターには,どのような点を期待しているかという問題を明らかにした.アンケート用紙を対象事業場に郵送し,193事業場より回答を得,有効回答率は72.8%であった.対象事業場の殆どが有機溶剤を使用しており,その他特定化学物質,鉛,鉛化合物,平成12年の労働安全衛生法の改正による通知対象物質等をも使用しており,従業員数は300人未満がほぼ半数を占めていた.危険有害情報の管理部門は,"担当部署での管理"が多く,1,000人以上の事業場では重複して"各部門でも管理している"というところもあった.約半数の事業場では,MSDSの全社共通リストを作成していた.納入業者によるMSDSの提供は各規模の事業場でほぼ充足されていたが,入手MSDSの職場内掲示,備え付けば必ずしも十分ではなく,"すべての職場で実施いる"という回答は1,000人以上の事業場では71.0%であったが,300人未満では27.6%に止まった.現行のMSDSを作業者に"理解できるように書き換える"措置は,全体で25.8%で,1,000人以上の事業場でも30.0%であった.一方,入手したMSDSの内容に"理解しにくいものがあった"という回答は,1,000人以上の事業場では73.3%と最も多く,300人未満の事業場で45.7%という興味のある結果が得られた.MSDSの内容が分からない場合の問い合わせば,事業場の規模に関係なく殆どの場合"メーカーに問い合わせる"という回答であった.化学物質を使用する職場で使用開始前に有害性調査を実施している事業場は,全体で72.1%,300人未満の事業場でも64.7%と予想したより多く,MSDSの管理状況は尚十分とは言えない点もあるものの,事業場は化学物質の有害性管理に関心の高いことがわかった.神奈川産業保健推進センターに期待される事項は,"書籍,データベース,情報の充実","講習会の開催""相談業務の充実"などであった.産業医と衛生管理スタッフの間でMSDSは話題となったことが全体では70%,1,000人以上の事業場では96.4%が"ある"と答えており,その割合は事業場規模と正の相関を示した.職場で使用されている化学物質のMSDSは殆どの産業医の手元にあるか,すぐ取り寄せられる状況であった.産業医によるMSDSの活用目的は,"使用物質の性状とその有害性の確認","職場巡視の参考資料","応急処置への対策"等であった.産業医と衛生管理スタッフのそれぞれから示された現行のMSDSの改善要望事項は,"作業者には,わかりにくい用語が多い","有害性の程度がわかりやすく書かれていない","現在使用されているMSDSのフォーマットがわかりにくい"の順であげられており,産業医と衛生管理スタッフがほぼ同意見であった.MSDSが事業者,作業者の化学物質等の有害危険情報源として有効に利用され,十分な機能を果たすためには,産業保健推進センターの情報提供,教育等の役割は大きいと考えられた.
- 社団法人日本産業衛生学会の論文
- 2002-09-20
著者
-
廣 尚典
NKK
-
廣 尚典
神奈川産業保健推進センター
-
石渡 弘一
神奈川産業保健推進センター
-
三宅 仁
富士通(株)健康推進統括部
-
杉森 裕樹
大東文化大学 スポーツ・健康科学部 健康科学科
-
杉森 裕樹
鈴鹿医療科学大学 薬学部
-
輿 貴美子
神奈川産業保健推進センター
-
芦田 敏文
神奈川産業保健推進センター
-
輿 貴美子
労働福祉事業団 神奈川産業保健推進センター
-
毛利 哲夫
労働福祉事業団 神奈川産業保健推進センター
-
杉森 裕樹
労働福祉事業団 神奈川産業保健推進センター
-
沼野 雄志
労働福祉事業団 神奈川産業保健推進センター
-
芦田 敏文
労働福祉事業団 神奈川産業保健推進センター
-
廣 尚典
労働福祉事業団 神奈川産業保健推進センター
-
三宅 仁
労働福祉事業団 神奈川産業保健推進センター
-
福島 路子
労働福祉事業団 神奈川産業保健推進センター
-
石渡 弘一
労働福祉事業団 神奈川産業保健推進センター
-
輿 貴美子
神奈川産業保健推進セ
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