浸潤性膀胱腫瘍に対する経尿道的切除術と動注療法による膀胱保存の試み

概要

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(背景と目的)浸潤性膀胱腫瘍に対して,経尿道的切除術(TUR)を中心に,動注療法を併用し膀胱保存治療を試みた.(対象と方法)対象症例は20例で,平均年齢61歳,男性18例,女性2例であった組織型は総て移行上皮癌で,異型度はgrade2が9例,grade3が11例であった.臨床的深達度はT2が13例,T3aが7例であった.TURは可及的に筋層深部まで切除し,セルジシガー法による内腸骨動脈動注療法(シスプラチン使用)を2回以上併用した.また20例中7例に,骨盤放射線療法も併用した.治療はTURが平均2.7回,動注療法が平均3.6回であった.(結果)平均観察期問36ヵ月(18〜82ヵ月)で,20例中15例(75%)が生存していた.生存15例中10例は,観察時点で腫瘍は認められなかったが,5例は腫瘍の再発が認められ,うち2例に膀胱全摘術が施行された.死亡例のうち4例が癌死で,いずれも遠隔転移(肺転移2例,肝転移2例)が認められた.癌死4例の初診時の腫瘍の特徴は,何れも表面非乳頭状,腫瘍径3cm以上で,3例(75%)に頸部から前立腺部尿道に浸潤を認めた.生存15例のうち,7例(47%)が非乳頭状,9例(60%)がgrade3,5例(33%)がT3aであったが,前立腺部尿道への浸潤は3例(20%)にしか認められなかった.(結論)非乳頭状,grade3の浸潤性腫瘍でも,症例を選択(腫瘍の大きさや,腫瘍の部位)すれば,膀胱保存治療も選択すべき治療法の一つであると考えられた.一方で,動注療法等により特異な腫瘍の再発形式を示すことがあり,今まで以上の注意深い観察が必要と思われた.
社団法人日本泌尿器科学会の論文
1996-01-20

浸潤性膀胱腫瘍に対する経尿道的切除術と動注療法による膀胱保存の試み

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