マウス膀胱癌(MBT-2)を用いた同種五所性移植モデルの確立

概要

論文の詳細を見る
継代移植腫瘍を用いた治療実験モデルの多くは,化学発癌した膀胱腫瘍を皮下に移植(異所性移植)して検討されてきた。この方法では各腫瘍の原発臓器の解剖的な特徴と生理学的条件に対する考慮が欠けている。そこで,生物的環境がより当該臓器に近い実験モデルの確立が必要と思われる。今回,著者らはマウスの皮下に継代移植された未分化膀胱腫瘍(MBT-2)を膀胱壁内に移植し(五所性移植),腫瘍の増殖速度,増殖形式などについて基礎的事項を観察して,癌の種々の治療実験のモデルとしての有用性について検討した。その結果,約3.0×10^3個のMBT-2細胞をマウスの膀胱壁に移植することにより,80%以上の確率で五所性移植腫瘍を膀胱に作ることができた。移植した癌細胞は,膀胱粘膜下より膀胱内腔に向かって大きな腫瘤を形成して膨隆性に増殖し,臨床上みられる浸潤性膀胱癌と共通する所見であった。また,生着,増殖した腫瘍は各時期でほぼ一定の大きさになることから各種治療実験に好都合なモデルである。また,増殖がある程度以上になるとほぼ全例に肉眼的血尿が認められ,上部尿路を閉塞し,両側水腎症をきたすことなどから,実際のヒトの浸潤性膀胱癌と一致した臨床像を示した。マウス五所性移植による膀胱癌モデルは,簡便な手技で短期間に高い生着率と,再現性を有することから膀胱癌の治療実験に有用と思われる。
社団法人日本泌尿器科学会の論文
1991-09-20

マウス膀胱癌(MBT-2)を用いた同種五所性移植モデルの確立

スポンサーリンク

概要

著者

関連論文

スポンサーリンク