マウス移植膀胱癌(MBT-2)に対する天然型ヒト腫瘍壊死因子(n-TNF)とCis-diamminedichloroplatinum(II)の併用効果の検討

概要

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約10万個のマウス膀胱癌(MBT-2移植膀胱癌株)を膀胱壁に移植したC3H/Heマウスに対して,天然型ヒト腫瘍壊死因子(n-TNF)と抗癌剤Cis-diammine dichloroplatimm(II)(Cisplatin)との併用療法を行い,その毒性と抗腫瘍効果について検討した.抗腫瘍効果については膀胱重量(≒腫瘍重量)で評価した.また,毒性については,体重と主な臓器の肉眼及び病理組織学的所見で評価を行った. その結果,1)Cisplatinとの併用において,n-TNFはLD_<50>の10分の1以下という少量投与で,投与量を増加させても正常マウスの毒性は増強しなかった.2)無投与の対照群に比べてCisplatinとn-TNFの併用群は膀胱重量が軽く,有意な抗腫瘍効果を認めた.3)抗腫瘍効果はCisplatinとの併用において,n-TNFの投与量に依存して抗腫瘍効果の増大を認めた.4)両者の併用による抗腫瘍効果の増強は,病理組織学的にも確認できた.すなわち,マウス移植膀胱癌に対してn-TNFとCisplatinの併用は,毒性を増強させることなく抗腫瘍効果を増強し,かつそれはn-TNFの投与量に相関した.以上の結果はCisplatinとn-TNFとの併用療法が臨床上有用な治療法となり得ることを示唆するものと思われた.
社団法人日本泌尿器科学会の論文
1992-10-20