歯の生理的移動についての実験的研究 : 近遠心的移動について
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概要
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ヒトの歯は萌出後も常に近心方向へ移動すると言われているにもかかわらず, いわゆる生理的歯牙移動については, ほとんど報告がなされていない.本研究の目的は, 対合歯, 隣在歯, 軟組織(頬, 舌), gingival fibers groupが歯の移動に及ぼす影響について病理組織学的に解明することにある.実験には22頭の成犬を用い, 下顎右側第2後臼歯を実験歯として, 対合歯(上顎第1, 第2後臼歯), 隣在歯(下顎第1後臼歯遠心根, 第3後臼歯)を抜去した.下顎第1後臼歯の近心根を支台として実験歯にかかる頬・舌圧を排除する装置を装着した.実験動物は実験群17頭を各経日最低3頭の4群に分けた.また, 残る5頭は対照群として90日間飼育した.実験終了後, 下顎右側(実験側)・左側(非実験側)第2後臼歯の歯周組織と対照群を比較観察し, 次の結果を得た.歯槽骨上で歯の生理的移動に関与していると考えられる口腔周囲軟組織, 隣在歯, 対合歯およびgingival fibers group等より歯に加わる圧や力を排除することによって, 実験側では, 歯周組織に変化を伴いながら歯は移動したが, 非実験側では実験側と比較して明らかな移動はみられなかった。実験側における歯の移動形式は, 遠心移動および挺出移動が主体であった.歯の移動に伴う歯槽骨の改造は, 装置装着後30, 60日目で最も著明に認められ, 90日目でも歯槽骨は安定しているとは認められなかった.以上の結果は, 歯槽骨上で歯を動かすと考えられる口腔周囲軟組織, 隣在歯, 対合歯およびgingival fibers group等のうち, いくつかの外力が歯の移動に対して抑止的な力として深く関与していることを示すものであり, これらから受ける力が矯正治療後の歯列弓の安定に不可欠な因子であることを病理組織学的に示唆するものである.
- 九州歯科学会の論文
- 1990-02-25
著者
-
木尾 哲朗
九州歯科大学共用試験OSCE実行委員会
-
藤田 邦彦
九歯大・顎機能矯正
-
藤田 邦彦
九州歯科大学 歯科矯正学 講座
-
木尾 哲朗
九州歯科大学 歯科矯正学 講座
-
木尾 哲朗
九州歯科大学 口腔外科学 第1講座
-
嶋村 昭辰
九州歯科大学
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