『建礼門院右京大夫集』における夢 : 象徴と比喩
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概要
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『建礼門院右京大夫集』には、睡眠時にみた夢の記述が2例しかない。一方、現実の儚さ、信じ難さを「夢」に譬える用例は多い。夢はいずれも時間認識と連関する。時間は通常、流れるものと認識される。しかし、源平の争乱、平家滅亡、愛する人の死という、大きな喪失体験は、時間認識を変えてしまう。夢としか観じようのない喪失を境に、時間は「昔」と「今」に分断されて捉えられる。このような認識では、たとえば、『更級日記』のような夢の記述はなされにくい。時間認識の分断を齎した喪失に対して、夢の比喩が盛んに用いられる。また、睡眠時の夢の2例の記述は、作品の主題である「愛と死」を象徴する。
- 2004-03-15
著者
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