現成礁を切る水路壁の連続露頭における地形調査法とその意義
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概要
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本稿は,現成サンゴ礁礁原の地形形成に関する研究方法について新たな手法および視点を提示することを目的とした。その際,「裾礁礁原における地形の時空間階層概念図」を示し,研究内容に対応する空間スケールとその調査法を,上記の時空間階層概念図に礁地形に関する諸図・写真を対比させながら論じた。これまで,礁原の地形形成論に明確に示されてこなかった礁地形のスケールに応じた地形階層は,礁原の各階層の地形に応じた形成過程や成因と関わっているために,きわめて重要なものと考えられる。このような立場から,本稿で,筆者らは裾礁礁原の地形を4つの地形階層に区分した。すなわち,I.礁原全体,1.帯状配列を示す地形帯,皿.微地形,IV.超微地形である。従来,完新世サンゴ礁の構造と形成過程を明らかにするための最も効果的な調査法として,掘削法が用いられてきた。掘削法には深くまで穿孔ができて,かつ連続的なコアを採取することができるという利点がある。しかし,掘削されたコアは地理的には点データであり,水平方向の解析は点データ間の推定にとどまらざるを得ない。このため,掘削法では,掘削地点の間隔に応じた地形階層を,点データであるコアによって代表させることになる。ここに新たに提示する礁原地形調査法は,港湾建設などのために礁原部分を凌漢した結果できた水路露頭において,直接,潜水調査によって連続露頭の観察を行うものである。このように礁原を凌洪してできた水路は,裾礁の発達が顕著な琉球列島において数多く建設されている。このようなところでは礁原構成層の連続的な構造を直接観察することができる。この方法の空間スケールに関する最大の優位性は,礁原地形の内部構造について水平方向の連続的解析が直接できることである。すなわち,露頭の範開内で上記の地形階層I-Vに対応した空間スケールの観察を行うことができることである。したがって,この方法によって調査を行なえば,水平方向の連続断面および化石サンゴ試料の放射性炭素年代を得ることによって,4つの地形階層を結びつけて礁原の地形形成を明らかにすることができる。また,この方法の時間スケールに関する利点は,水路露頭中の造礁サンゴの種,生活型,群体の大きさ,成長速度,累重様式の時系列的変化などを示すことによって,個々の造礁生物の生長に関する時間スケールと礁地形の形成に関わった時間スケールとを結合させて論じることができることである。
- 地理科学学会の論文
- 1991-07-28
著者
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