ホルン奏者の上唇を伝搬する波動の特性とそのモデル化
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概要
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ホルン奏者の上唇の運動を3次元的に理解する目的で、透明のマウスピースとナチュラル・ホルンを用いて唇の運動を正面と横からのストロボによる疑似スロー・モーションとして観測し、さらに座標軸を設定して1コマごとに運動を解析した。上唇の開閉運動は上唇の先端を追跡することによって分かる。この開閉運動に重なってはいるが、別種の波動が上唇表面に発生しており、その伝搬経路と伝搬速度は唇を横から観察するときに現れる可視化映像上の輝点(波頭に相当する凸部)の運動を解析することによって知れる。最低の第2次モード音F_2(87.3Hz)を上級者が吹奏すると、波動はマウスピースのリムに接する唇の端点から発生し、唇の中央まで水平に伝搬し、そこから上方に曲がり、リムで反射されて元に戻る。波動が唇の中央まで水平に伝搬するとき、唇は外向きに開いていく。高次モード音のF_3やF_4では波動は主に垂直方向にのみ伝搬する。伝搬速度は約1〜4m/sの範囲にあり、唇の張力や吹奏圧の影響を除外すると、約1.8m/sと推定された。さらに波動をレイリー型表面波と仮定すると、唇のずり弾性率は約4×10~3 N/m~2となった。また、波動伝搬と開閉運動を再現できるような1質量-3バネモデルを提案した。
- 一般社団法人情報処理学会の論文
- 2001-02-22
著者
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