電解調製酸化還元試薬を用いる前処理法の流れ分析への応用
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概要
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流れ分析法における試薬発生過程のオンライン化は, より簡便・迅速な測定に有効であるばかりでなく, 今まで実用分析に供されなかった化学的活性の高い試薬の利用を可能にする. これは流れ分析法が有する優れた精度に加え, 試薬が一連の準閉鎖系内で調製され供給できるため, その安定性が流れ系内でのごく短い時間のみ確保されれば良いからである. 本研究では三価コバルトイオン(Co^<3+>)及び二価クロムイオン(Cr^<2+>)のそれぞれ極めて強力な酸化力及び還元力に着目し, これらを用いる前処理法の流れ分析への応用について検討した. Co^<3+>あるいはCr^<2+>を連続的に発生させ供給できるフロー式の電解装置を開発し, FIAやHPLCのシステムに導入した. まずCo^<3+>をフローインジェクション/冷蒸気原子蛍光法(FI/CV-AFS)による全水銀の定量へと応用した. 同イオンは試料中の有機水銀を迅速に水銀イオンへと酸化分解し, μgdm^<-3>レベルの微量水銀の自動連続測定が可能になった. 次にCo^<3+>が各種有機リン化合物を常温で短時間のうちに(<10min)リン酸イオンへと分解でき, かつモリブデンブルー(MB)法によるリン定量を干渉しないことを明らかにし, FI/MB法による有機リンの定量のためのオンライン前処理へと応用した. 更に常温下でのCo^<3+>酸化に基づく化学的酸素要求量の簡便な測定法についても検討した. 一方, Cr^<2+>については, これを従来から課題とされてきたヨウ化物共存下における水銀の冷蒸気発生法へと応用した. Cr^<2+>は安定なHgI_4^<2->からも水銀を還元気化させることができるのみならず, Cr^<2+>の強い還元力のもとでは試料溶液中に高濃度(<10 mgdm^<-3>)のヨウ化物イオン(I^-)を添加したほうがより高精度・高感度な測定のためにむしろ効果的であることを見いだした. これはI^-が水銀の安定剤として作用することで, 水銀の管壁への吸着や共存物質による干渉から保護するためと結論した. 更にCr^<2+>による還元分解過程をポストカラム部に組み入れたHPLCシステムを構築し, 各種有機水銀の化学形態別定量へと応用した.
- 社団法人日本分析化学会の論文
- 1998-02-05
著者
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