話者の対象認識過程からみた助詞「が」「は」の意味分析
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概要
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日本語の格助詞「が」、副助詞・係助詞「は」の意味解釈については、多くの国語学者・言語学者により論じられており、即に種々の学説が提案されている。たとえば、久野は図1に示すように、「は」を主題と対照に、「が」を中立叙述と総記と目的格に分け、新情報/旧情報という観点から「が」と「は」の相違を論じている。しかし、従来の学説の主な論点は主題/主格、新情報/旧情報などといった点にとどまっており、話者の対象認識過程まで踏み込んだ議論はあまりされていない。池田は、認知的な観点から、「は」が「その発話の対象世界が何であるかを指し示すものである」のに対して、「が」は「対象世界について叙述する際の着目対象を指すもの」という説明原理を与え、「が」に関する種々の言語現象をこの説明原理に基づいて説明することを試みている。時枝の言語過程説を発展的に継承した三浦の助詞論によれば、助詞は用言に対する実体の関係(格関係など)を示すだけでなく、実体に対する話者の捉え方をも表す。本稿では、このような観点から、格助詞「が」、および副助詞・係助詞「は」を対象に話者の対象認識過程からみた意味分析を行い、核となる概念(コア概念)を明らかにする。さらに、「は」や「が」を使い分けることによって生じる微妙なニュアンスの相違をも解析できるようなより高度な日本語文の意味処理を実現するための助詞「は」「が」に関するルール化を試みる。
- 一般社団法人情報処理学会の論文
- 1993-03-01
著者
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