4.ビタミンD受容体の核移行には,リガンド依存性・非依存性の2つの機構が存在する(脂溶性ビタミン総合研究委員会 第307回会議研究発表要旨)
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概要
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ビタミンD受容体(VDR)はリガンド依存性転写調節因子であり, その機能を発揮するためには核に局在しなければならない. 以前, 我々は, GFP-VDR融合タンパク質を用いて, VDRはリガンド非存在時にも核優位に存在するが, リガンド添加によってさらに核への局在性が顕著となることを報告したが, このことは, VDRの核局在性にリガンド依存性, 非依存性の2つの機構が存在することを示唆している. このことを確かめるために, ジギトニンで処理したsemi-intact cel1を使うin vitro nuclear transport assayを用いて, VDRの核移行を検討した. Recombinant VDRを輸送基質とし, 別途調整したHeLa細胞由来の細胞質抽出物質を添加して本assayを行なったところ, VDRはリガンド非依存性に核移行した. リガンド結合領域(LBD)を欠くVDRを用いても, リガンド非依存性核移行が観察され, DNA結合領域(DBD)あるいはHinge部にリガンド非依存性核移行を担う領域が存在することが示唆された. 一方, LBDのみでは核移行は見られなかったが, Hinge部を含むLBD(DBDを欠く)ではリガンド非依存性ではなく依存性核移行が観察され, VDRの核移行にリガンド依存性と非依存性の2つの機構が存在し, それぞれのシグナルはHinge部とDBDに存在することが初めて示された. さらに, リガンド非依存性にVDRの核移行を担う分子を同定したのであわせて報告する. 〔論議〕<山田委員>核内移行シグナルを含むヒンジ領域といわれた領域は, リガンド結合ドメインのループ1-3に存在するので, ヒンジ領域という表現は適切ではないのでは. この核移行シグナルが機能するのに, リガンドが存在する理由をどう説明するか. <大薗委員>ヒンジというのは古典的な考え方で, 確かに用語としては変更したほうがよいと思われる. ただ, 我々のmutantがリガンドに応答するという性質を保持していることは確かめている. この部位に存在する核移行シグナルがリガンド依存性なのはリガンドの直接的効果というよりもリガンド結合領域の高次構造の変化により, C端部による抑制が解除されるためと考えられる. この部位の核移行シグナルのみを他のタンパク質に付加したときに核移行させることからも, リガンド結合領域全体が必要ないと考えることには根拠がある. <清野委員>通常リセプターはリガンドの作用を発揮するために存在すると考えられる. もしリガンド非依存性にリセプターが核に移行するのであれば, そのリセプターのtarget geneに対する意義は何なのか. あるいはそのようなtarget geneが存在するのか. <大薗委員>先ほどの加藤先生の発表からも, リガンドと結合していないビタミンD受容体にDNA結合性があり, 何らかの作用を持つことが考えられる. リガンドと結合することで, co-activator複合体との結含性が変化し, 遺伝子転写制御能が高まるものと考えている. <須田委員長>ステロイドホルモンの受容体は核(内)受容体と総称されているが, リガンドを細胞膜から核へ運搬するタンパク質は何か. ビタミンDの場合, VDRはcytosolに存在するというが, ビタミンDの場合はcytosolに存在するVDRが細胞質の輸送も兼ねているか. <大薗委員>核移行メカニズムはステロイドホルモン受容体の種類によりことなる. グルココルチコイド受容体では, リガンドの無いときは細胞質に存在し, 甲状腺ホルモン受容体では核に存在する. ビタミンD受容体ではその中間型で, そのメカニズムとして, 我々のようにリガンド依存性と非依存性の核移行シグナルの両方が存在することと考えると分かりやすい. ビタミンDの場合はcytosolに存在するVDRが細胞質の輸送も兼ねていると考えている.
- 2004-10-25
著者
-
道上 敏美
大阪府立母子保健総合医療センター研究所環境影響部門
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大薗 恵一
阪大院・小児発達医学
-
大薗 恵一
大阪大学・医学系研究科 情報統合医学 小児科学
-
道上 敏美
呉共済病院 小児科
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道上 敏美
大阪大学院小児発達医学 大阪府立母子医療センター研究所環境影響部門
-
宮内 芳輝
慶応義塾大学・医学部
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宮内 芳輝
大阪大学院小児発達医学, 大阪府立母子医療センター研究所環境影響部門
-
道上 敏美
大阪府立母子保健総合医療センター研究所 環境影響部門
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