パーオキシダーゼ・アイソザイムによるスギ・クローン品種のかん定

概要

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生物体のもつ酵素のアイソザイムは, それに関与する遺伝子型によっていろいろなパターンを示す。したがってスギのようにさし木が行なわれる場合には, さし木品種の判別にアイソザイムを, ある制限つきで使うことができるはずである。本研究は, 上記の可能性を明らかにするために, クモトオシを材料として行なったものである。本研究の第1部では, 同じ個体内または同じクローン内の針葉は, ごく若い葉を除けば, 常に同じアイソザイムのパターンを示すことが証明された。それで, 次には, 本邦各地で, クモトオシの名でよばれている54個体からの針葉を集め, それらの外観の特性とパーオキシダーゼのアイソザイムをしらべた。外観的にクモトオシらしくないものは7個体あったが, アインザイムでは, 9個体がクモトオシとは異なることが見いだされた。すなわち, 供試した54個体中, 9個体は, にせものであることが検出されたのである。アイソザイムによるクローン品種のかん定には, 注意すべき1,2の制限がある。それは, (1)同じものだといわれているものが, 真に同じものであるかどうかを, 高い確からしさでかん定することはできるが, (2)任意にある試料の中から, ある特定のクローンに属するものをアイソザイムだけからさがし出すことはできない。アイソザイムによる品種かん別は, 特にさし木繁殖のできる品種では今後実用価値の高い技術になるであろうが, 上記の制限については慎重に考える必要がある。
日本森林学会の論文
1969-09-25

パーオキシダーゼ・アイソザイムによるスギ・クローン品種のかん定

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