動植物における競争の研究 : XI. 大麦の競争力と密度反応

概要

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大麦12品種を用いて栽植密度に対する反応と競争力との関係を明らかにした。栽植密度の実験は2×2cm^2,4×4cm^2,8×8cm^2,16×16cm^2,および32×32cm^2の5種の正方植で行い,株当り稈数,穂数,穂重および植物重を調査し,つぎのことが明かになった。栽植密度の減少とともに,程数,穂数などの栄養的生育は増加するが,株当り穂重はある点から先は増加が止まる。この増加の止まる点はそれぞれの品種の遺伝子型によって異る。栄養的生育の密度反応と,繁殖能力のそれとは相関がない。競争力の実験では,検定品種「赤神力」に対して上記12品種の競争力を調べたところ,植物重,稈数,穂数に表われる競争力は品種間に有意な変異が認められた。以上の二つの実験の結果に基いて,競争力と密度反応を比較したところ,商老の間には相関がなかった。従来農学および生態学者の間にはしばしば競争と密度反応を混同する傾向が見られるが,この研究から両者はそれぞれ別個の植物学的特性として取扱う必要のあることが示された。
日本育種学会の論文
1966-03-25