マルチスレッド実行環境に適した並列処理システムのメモリ管理方式

概要

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共有メモリ型マルチプロセッサにおける並列処理の単位として,スレッドが注目を浴びている.スレッドは同一仮想空間上で並列に動作するため,切換え,型生成時間を短縮でき,柔軟で高速な同期,通信,排他制御が可能である.しかし,仮想空間を共有することは,スレッド間でのデータ保護を弱めることになる.特に,スレッド実行に伴って伸縮するスタック領域の保護が弱い.このため,一般には,固定的に確保したスタック領域間に境界領域を設け,あるスレッドが境界領域を参照した場合にスレッドまたはプロセス自体を異常終了させる方式が用いられる.しかし,この方法では,仮想空間を最大限に使用することができない.そこで,我々は,スレッドのスタック領域を保護するとともに,仮想空間を最大限に使用するメモリ管理方式:「動的スタック拡張方式」を開発した.動的スタック拡張方式では,スタック領域の伸縮に伴って,適宜仮想空間の割当て/解放を行う.今回開発した並列処理用OS上に動的スタック拡張方式を実現した結果,5%程度のオーバヘッドがあるものの,スタック領域の保護と,仮想空間の有効利用を両立させることが可能となった.
1991-04-15