グルコース添加湛水土壌に発現する殺菌作用の原因物質について
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概要
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グルコース添加湛水土壌の殺菌作用は土壌中に産生する揮発性抗菌物質と密接な関係がある。この揮発性抗菌物質を明らかにするために畑土壌(10g)に3%グルコース液(10ml)を加えて保温静置した土壌の揮発性成分の分析および検出された成分の Fusarium oxysporum f. sp. raphani に対する抗菌性の検定を行った。揮発性成分の分析は土壌の殺菌力が最高になる湛水後6日目の土壌について行った。硫化水素, 硫化カルボニルを含めて土壌中の揮発性硫黄化合物の濃度はきわめて低く本菌の死滅に関係するとは考えられなかった。エチレン, エチレンオキシド, ホスフィンは検出されなかった。抗菌性を有する揮発性成分は土壌に窒素ガスを通じ, それを-35Cに冷却したトラップに導くことによって捕集された。土壌のpHが5.5以上では抗菌性成分は駆出されず有機酸であることが示唆された。トラップで捕集した抗菌性成分をガスクロマトグラフィーおよびガスクロマトグラフィー-質量分析法によって分析した結果, 捕集成分は酢酸, n-酪酸および微量のエタノールであった。このことから抗菌性は酢酸, n-酪酸によるものと推定された。一方, 酢酸およびn-酪酸の本菌厚膜胞子に対する24時間後のLC 50はそれぞれ 1,506ppmおよび 1,522ppmであった。また, 6日目の土壌溶液中には酢酸およびn-酪酸がそれぞれ 3,407ppmおよび 2,944ppm存在し, それは厚膜胞子を死滅させるに十分な濃度であった。さらに, グルコース添加湛水土壌の本菌厚膜胞子に対する殺菌力と土壌溶液中の酢酸およびn-酪酸の濃度との間には正の相関が認められた。以上の結果からグルコース添加湛水土壌における Fusarium oxysporum f. sp. raphani の死滅は土壌中に産生する酢酸およびn-酪酸によるものであると結論した。
- 日本植物病理学会の論文
- 1986-07-25
著者
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