659. 現生造礁性サンゴ中のトリウムおよびプロトアクチニウム同位体とそれらの年代測定への影響
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概要
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四国室戸岬からNew Britain島にかけての太平洋西縁部に沿う9地域の現生造礁性サンゴを, U・ThおよびPa同位体組成とUの分布様式について検討した。その結果, ほとんどの試料で測定可能量のThおよびPa同位体が検出された。また, 南西諸島産化石試料中には, 同地域の現生試料と同程度の^<232>Thが含まれていることから, 少なくとも南西諸島産化石サンゴから^<230>Thおよび^<231>Pa放射年令を求める場合には, 初生的な^<230>Thと^<231>Pa量を見積り, 補正年令を求める必要がある。さらに, フィッション・トラック法で観察されたUの不均一分布は, ^<238>U量の部分的な差が最大30%に達し, ^<238>U最多部と最少部間で見かけの^<230>Th・^<231>Pa年令ともに, 計数誤差以上の差を生ずる原因になる可能性もある。見かけの^<230>Th年令値の補正は, 現生種の^<230>Th/^<232>Th放射能比が1.4〜3.0と限られた範囲に入ることから, 化石試料中の^<232>Th量が求まれば, 近似的には可能である。ところが, 今回得られた現生種の^<230>Th/^<232>Th比が, 生息域の海水の同比より, 見かけ上いく分高い事に注目しなければならない。このことは, 各試料の分析された部位が数年〜数十年以前に形成された部分であるため, 試料採集時までに直接の親核種である^<234>Uから成長した^<230>Thが, 骨格分泌当時の^<230>Th/^<232>Th比を, 見かけ上増大させたためと説明される。結局, 化石サンゴの見かけの^<230>Th年令の補正に用いる初期^<230>Th/^<232>Th比として, 試料産出地付近の海水の^<230>Th/^<232>Th比を用いる事が, もっとも適切な方法といえる。本小論では, 南西諸島化石サンゴに, 与論島および徳之島の沿岸水の^<230>Th/^<232>Th比の平均値(1.4)を初期^<230>Th/^<232>Th比として用い, 補正^<230>Th年令を求めたところ, 矛盾のない値を得ることが出来た。
- 1976-04-30
著者
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